月別アーカイブ: 2009年6月

アンダーカヴァー We Own the Night

アンダーカヴァー [DVD]
アンダーカヴァー [DVD]

posted with amazlet at 10.12.30
ポニーキャニオン (2009-04-24)
売り上げランキング: 47722


時代は1980年代後半のニューヨーク・ブルックリン。街にはロシアン・マフィアが台頭し、ドラッグの市場を拡大しつつあった。 ― マーク・ウォーバーグとホアキン・フェニックスが共同主役で兄弟を演じ、共同でプロデュースにも参加している。

ニューヨーク市警の希望の星、兄ジョーをマーク・ウォーバーグ、彼の捜査対象でもあるロシアン・マフィアの中堅、弟ボビーをホアキン・フェニックス、また二人の父で地域の警察署長をロバート・デュバルが演じている。さらには、ホアキン・フェニックスの彼女がエヴァ・メンデスという豪華な陣容。

弟ボビーは組織の中でやりたい放題やっているが、捜査対象が彼の組織に絞られるにつれ、どんどん追い詰められて、最終的に組織の味方になるか、父と兄のいる警察の味方になるか、究極の選択を迫られる。そして、ついには邦題の通り、アンダーカバー(覆面捜査官)の道を選ぶのだが・・・。

本作を観て改めて感じたことは二つ。一つ目は悪事は引き合わないということ。悪事は、確かに一時的に最高の享楽を与えてくれることもあるのだろう。しかし、この最高の享楽の後に、永遠の地獄が待っている。

二つ目は、家族の結束。家族は一時的に断絶、分裂することもあるが、結局どんな人間関係よりも強く、濃い絆で結ばれている。一時的に関係がおかしくなることもあるかもしれないが、最終的には赦し合い、絆を回復できるということか。

冒頭は軽いノリで始まるが、中盤からどんどん引き込まれる。テーマは、ゴッドファーザーにもちょっと似ているが、悪事は大きな代償を伴うということ、そして家族の絆は永遠ということでしょうか。

人気ブログランキングへ

クイーン The Queen

クィーン<スペシャルエディション> [DVD]” style=”border: none;” /></a></div>
<div class=
エイベックス・エンタテインメント (2007-10-24)
売り上げランキング: 24,899


1997年5月2日、英国でブレア政権が発足した。その約4ヵ月後の8月31日、ダイアナ妃がフランス・パリで事故死し、9月6日には国葬が執り行われた。本作は、この間の特にダイアナ妃死去から国葬に至るまでの1週間にスポットを当て、エリザベス女王をはじめとするロイヤル・ファミリーと、ブレア政権の対応を、ドキュメンタリー・タッチで描いている。

それにしても思わされるのは、ダイアナ妃が国民の間で、ものすごい圧倒的な人気があったということ。本作の中でも、英国中で老若男女の人々が、事故死の報の後、英国中で悲しみに泣き暮れている様子が、当時の実際のフィルムを使って描かれている。

事故死の当時、ダイアナ妃はチャールズ皇太子との離婚が既に成立しており、ロイヤル・ファミリーと法的関係はなかった。だから、エリザベス女王は、ダイアナの死去を一民間人の事故死として扱い、休暇先からも帰らなかったし、追悼声明も出さず、国葬をするつもりもなかった。しかし、この「当たり前の態度」が、英国民の大きな怒りを買い、皇室支持率の急落につながる・・・。

ロイヤル・ファミリーの様子と、ブレア政権の対応が、事実に忠実に、なおかつ人間的な心理描写も交えて細やかに描かれている。エリザベス女王を演じたヘレン・ミレン、ブレア首相を演じたマイケル・シーンも、あまり外見は本人に似てはいないが、表情や物腰の演技で本人に似せている。そこに力強いリアリティが宿っている。

それにしても、なぜダイアナ妃は、なぜここまで人気があったのか。容姿の綺麗な人は、世の中にいくらでもいる。人道事業などを手広くやっている立派な人もいくらでもいる。なぜなのか・・・。二人の子どもはすでに大人になった。長男のウイリアム王子は、もともとダイアナ妃に良く似た顔立ちだったが、最近は少し頭が薄くなってきて(余計なことか・・・)父親にも良く似てきた。時の流れを感じます。

人気ブログランキングへ

コーチ・カーター Coach Carter

コーチ・カーター スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン (2006-09-08)
売り上げランキング: 3213


バスケットボールの元スター選手、カーター(サミュエル・L・ジャクソン)が地元高校バスケ部のコーチを頼まれる。スパルタ式トレーニングの効果が間もなく現れ、平凡なチームは地区の強豪にのし上がる。しかし、選手たちの学業成績はそれと反比例するように下降線をたどった。

コーチ・カーターは、選手を学業に専念させるため、心を鬼にして練習場の体育館を閉鎖する。カーターと選手、保護者、学校側の対立が一気に噴出、カーターは窮地に立たされる・・・。これが本作の中盤までの筋書きだが、ストーリーはすべて実話に基づいている。

スポーツ選手のように、若いときにピークを迎えるキャリアを選んだ人の人生は、想像以上に大変だ。一般の人が味わうことができない成功を手にするが、その後の人生は、ある意味で、頂点からひたすら下降線をたどる人生である。

ましてや学業をしっかり修められなかった場合、ふつうの職業にさえ就くことができない場合もある。たまに、監督や解説者のような形で、その後も上昇気流に乗り続ける人もいるが、そういう人は数少ない例外と言えるだろう。

さらに、本作で描かれている状況で言えば、アメリカのインナー・シティーの環境は、若者にとって大変苛酷な環境だ。一瞬の気の緩みで、あらゆる悪事に引き込まれ、一生を台無しにされる。コーチ・カーターは、これらのことをよく分かっていたからこそ、涙を飲んで体育館をロックアウトしたのだろう・・・。

スポ根ものは、とかくストーリーが単純になりすぎる傾向にあるが、本作は実話をベースにしているだけあって、ここぞという場面で、現実ならではの複雑な展開を見せる。それがまた見る人に感銘を与える。登場人物の心理描写も細かく丁寧。それでまた引き込まれる。

たしかに、スポ根、青春ものではある。しかし、そういうカテゴリーを超えた秀作。何歳の人が見ても、深い感銘を受けるだろう。

人気ブログランキングへ

チェ 28歳の革命  Che: Part One

チェ ダブルパック (「28歳の革命」&「39歳別れの手紙」) [DVD]
NIKKATSU CORPORATION(NK)(D) (2009-06-12)
売り上げランキング: 7876


エルネスト・チェ・ゲバラに関する映画は数多く制作されており、実に玉石混合である。その中でも、本作は、ソダーバーグ監督、デルトロ主演という手堅い陣容で、期待を持って観た。そして、期待は裏切られなかった・・・。

ゲバラというと、とかく英雄的に祭り上げられがちである。喘息持ちだったという肉体的弱点でさえ、「喘息持ちだったのに、20世紀最大の革命の立役者になった」という具合に、祭り上げるための言い分として利用される始末である。

しかし、本作はそういう底の浅いアプローチを取ることなく、時代考証などもしっかり固め、史実に忠実に、等身大のゲバラを描き出している。そうした良い意味での冷めた距離感に好感を持った。

革命中の様々な戦闘、そこに交錯する人間模様なども、かなり具体的に描き込んでいて、調査に手間をかけているのが分かる。前にも書いたが、こういう手間のかかった映画が好きだ。制作やキャストの自己満足でなく、観る人のことを考えて作っていることが伝わってくる。もう一つの「39歳 別れの手紙」も近いうちにぜひ観てみたい。

しかし、いろいろ調べてみて分かったのだが、キューバ革命というのは、このアルゼンチン人のゲバラだけでなく、カストロ兄弟もスペイン人移民2世で、中心人物はみな「外人」だったということだ。やはり、よそ者の方が物事を大局的、俯瞰的に見ることができるのだろうか・・・。

人気ブログランキングへ

戦場のピアニスト   The Pianist

戦場のピアニスト [DVD]
戦場のピアニスト [DVD]

posted with amazlet at 10.12.30
アミューズソフトエンタテインメント (2003-08-22)
売り上げランキング: 5961


ナチスのホロコーストを、ユダヤ人の視点から描いた作品は数多くあるが、この作品は実話をベースにしている点、さらに主人公が音楽家だという点が個性的である。主人公シュピルマンの弾くショパンの旋律が、観終わった後も耳に残る。

最も印象的なのは、やはり最後の方でシュピルマンがドイツ軍将校に見つかり、その場でピアノを弾かされるシーン。将校は黙って静かに演奏を聴くが、その無言の心象表現が抜群に巧い。別れ際のシュピルマンとの会話も印象的だ。

映画は、ドイツ軍、というか、親衛隊の残酷さを鋭く描いている。同時に、ドイツ軍将校がシュピルマンの命を救ったという点も丁寧に描いている。この点は、たぶん原作も同じスタンスなのだろうと思うが、ナチス・ドイツ=悪党、というステレオ・タイプを克服している。

監督のロマン・ポランスキーは、ユダヤ系ポーランド人で、ゲットー暮らしの体験があり、さらに母親をアウシュビッツで亡くしている。そういう意味で、ポランスキーがナチス・ドイツというものを冷静に描いた点は、特に評価されて良いと思う。

人気ブログランキングへ