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アメリカ中西部の片田舎で引退生活を送る孤高の老人ウォルト(クリント・イーストウッド)。かつて朝鮮戦争に参戦し、退役後は自動車メーカーのフォードのグラン・トリノなどの組立て工などをして子どもを育て上げ、妻を亡くした今、静かな余生を送っている。
しかし、そんなウォルトの住む保守的な中西部の土地にも、近年では多くの移民が流入してきたために、アジア系やヒスパニック系の文化が社会の中に深く浸透し、伝統的なアメリカのコミュニティも変化を余儀なくされていた。もともと典型的な保守アメリカの価値観を重んじるウォルトは、そんな環境の変化に、いささか苛立たしいストレスを感じる日々を過ごしていたが、ある日、そんな彼の静かな引退生活を打ち破る大変な事件が起き…。
この映画は、かつての古き良きアメリカの伝統的な価値観と、移民国家アメリカの多様性を体現するリベラルの価値観の衝突を描いているように見える。アメリカという国は、なんだかんだ言ってアングロサクソンのエリート層が根本を支配している国だが、移民国家であるがゆえに、世界中から殺到する移民の人々の価値観や意向の影響を受けて、その中身は刻々と変化している。
たとえば、いまアメリカの共通語といったら、誰もが英語だと思っているが、そのうちにスペイン語になるだろうと言う人もいる。実際にそうなるかどうか分からないが、カリフォルニア州など西部では、スペイン語のテレビ・チャンネルも多いし、大統領選挙の時などは、候補者がサワリだけでもわざわざスペイン語で演説をすることも多い。このように、アメリカという国は現在進行形で変化している国なのである。この映画は、そんなアメリカの真相の一面を語っているように思えた。