月別アーカイブ: 2010年12月

グラン・トリノ  Gran Torino

グラン・トリノ [DVD]
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アメリカ中西部の片田舎で引退生活を送る孤高の老人ウォルト(クリント・イーストウッド)。かつて朝鮮戦争に参戦し、退役後は自動車メーカーのフォードのグラン・トリノなどの組立て工などをして子どもを育て上げ、妻を亡くした今、静かな余生を送っている。

しかし、そんなウォルトの住む保守的な中西部の土地にも、近年では多くの移民が流入してきたために、アジア系やヒスパニック系の文化が社会の中に深く浸透し、伝統的なアメリカのコミュニティも変化を余儀なくされていた。もともと典型的な保守アメリカの価値観を重んじるウォルトは、そんな環境の変化に、いささか苛立たしいストレスを感じる日々を過ごしていたが、ある日、そんな彼の静かな引退生活を打ち破る大変な事件が起き…。

この映画は、かつての古き良きアメリカの伝統的な価値観と、移民国家アメリカの多様性を体現するリベラルの価値観の衝突を描いているように見える。アメリカという国は、なんだかんだ言ってアングロサクソンのエリート層が根本を支配している国だが、移民国家であるがゆえに、世界中から殺到する移民の人々の価値観や意向の影響を受けて、その中身は刻々と変化している。

たとえば、いまアメリカの共通語といったら、誰もが英語だと思っているが、そのうちにスペイン語になるだろうと言う人もいる。実際にそうなるかどうか分からないが、カリフォルニア州など西部では、スペイン語のテレビ・チャンネルも多いし、大統領選挙の時などは、候補者がサワリだけでもわざわざスペイン語で演説をすることも多い。このように、アメリカという国は現在進行形で変化している国なのである。この映画は、そんなアメリカの真相の一面を語っているように思えた。

ソルト  SALT

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主人公イブリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、ソ連育ちのアメリカ人。石油開発会社の社員を装ったCIAのスパイで、北朝鮮での長い拷問に耐えた末、アメリカへの忠誠心を認められた筋金入りのエージェント。

この映画をナメてはいけない。ドンデン返しに次ぐドンデン返し。ここがオチだと思ってみていると、実は次の展開がある。まるで、ロシアのマトリョーシカのような作品。最初のイメージを信じていると裏切られ、次の固定観念が現れる。そして、そのイメージを元に見ていると、さらにそれが嘘で、次の展開が現れ…、といった繰り返しで、誰を信じればよいのか、何を信じれば良いのか、分からなくなる。

それにしても、アンジェリーナ・ジョリーは、よく頑張った。もともと、トム・クルーズをキャスティングしてキャンセルになったといういわくつきの作品。どこまでスタントで、どこまで本人がやっているのかという興味も湧く。何度も見たくなる、凝った構成も魅力。

96時間  Taken

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元CIA諜報員のブライアン(リーアム・ニーソン)は、離婚後、大金持ちと結婚した妻に親権を取られ、17歳の娘とも自由に会えない悶々とした日々を過ごしていた。そんなある日、娘が女友達とパリに旅行にいくと言い出す。

職業柄、イヤな予感がしたために娘を止めようとするが、妻にたしなめられ、娘の強い希望もあり、パリ行きをしぶしぶ認める。しかし予感は的中し、娘と友人は、パリを根城にする人身売買に手を染める東欧マフィアに拉致されて・・・。

元諜報員のブライアンは、その専門技能を活かし、これでもかとばかり、東欧マフィアの面々をボコボコにして、娘のもとへ一歩一歩と近づいていく。この徹底したボコボコぶりが、世の中の不条理に耐えて生きる普通の大人たちに、何とも言えないカタルシスをもたらすかも。

主演のリーアム・ニーソンがいい味を出している。脚本はリュック・ベッソン。どうりで、ストーリー展開にスピード感があると思いました。