月別アーカイブ: 2010年3月

ニクソン NIXON

ニクソン [DVD]
ニクソン [DVD]

posted with amazlet at 10.12.25
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2004-09-15)
売り上げランキング: 11712


リチャード・ニクソン大統領は、ベトナム戦争を終わらせ、中華人民共和国との国交を樹立したといった大きな功績を残した大統領だったが、おそらく米国史上で最も人気がなく、最も惨めな辞め方をした大統領の一人として記憶されているのではないかと思う。本作は、そのニクソンの伝記映画。

ニクソン自身に人気がなかったから、本作はたぶん同じオリバー・ストーンが監督した「JFK」などに比べても、大変知名度が低い。しかし、映画としての完成度は高いように感じた。とくにニクソンの内面的な個人的苦悩を非常に丁寧に描いている。

苦労人気質、田舎者気質が抜けないので、東部のエスタブリッシュメントに受け入れられない。人との関わり方が分からないので、多くの敵を作り、ついつい孤立してしまい、薄暗い秘密主義や陰謀の世界を自ら作り上げてしまう。そして、ついには自ら破滅への坂道を転げ落ちていく・・・といった経過を丁寧に描いている。

印象的なのは、辞任を決意した直後、キッシンジャーとともに、神に祈るシーン。無神論者とみえるユダヤ人のキッシンジャーは、ニクソンに強く請われて一緒に祈るのだが、神に対して心情を吐露するニクソンをわきに、大いに困惑する。しかし、ニクソンは子どものように泣きながら、自分がなぜ破滅したのか、どうすればよかったのか、切々と神に訴え、問いかける。

アメリカの大統領は、米国だけでなく、世界の政治経済を左右する権力を一手に握っている。だから当然、そこには無数の人の欲望や思惑がうごめき、互いに利用し、利用されるようなドロドロの暗闘が繰り広げられる。しかし、誰もがニクソンのような末路をたどるわけではない。なぜニクソンは破滅したのか、他人事ではない教訓を得られる映画でもある。

人気ブログランキングへ