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ニクソン NIXON

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リチャード・ニクソン大統領は、ベトナム戦争を終わらせ、中華人民共和国との国交を樹立したといった大きな功績を残した大統領だったが、おそらく米国史上で最も人気がなく、最も惨めな辞め方をした大統領の一人として記憶されているのではないかと思う。本作は、そのニクソンの伝記映画。

ニクソン自身に人気がなかったから、本作はたぶん同じオリバー・ストーンが監督した「JFK」などに比べても、大変知名度が低い。しかし、映画としての完成度は高いように感じた。とくにニクソンの内面的な個人的苦悩を非常に丁寧に描いている。

苦労人気質、田舎者気質が抜けないので、東部のエスタブリッシュメントに受け入れられない。人との関わり方が分からないので、多くの敵を作り、ついつい孤立してしまい、薄暗い秘密主義や陰謀の世界を自ら作り上げてしまう。そして、ついには自ら破滅への坂道を転げ落ちていく・・・といった経過を丁寧に描いている。

印象的なのは、辞任を決意した直後、キッシンジャーとともに、神に祈るシーン。無神論者とみえるユダヤ人のキッシンジャーは、ニクソンに強く請われて一緒に祈るのだが、神に対して心情を吐露するニクソンをわきに、大いに困惑する。しかし、ニクソンは子どものように泣きながら、自分がなぜ破滅したのか、どうすればよかったのか、切々と神に訴え、問いかける。

アメリカの大統領は、米国だけでなく、世界の政治経済を左右する権力を一手に握っている。だから当然、そこには無数の人の欲望や思惑がうごめき、互いに利用し、利用されるようなドロドロの暗闘が繰り広げられる。しかし、誰もがニクソンのような末路をたどるわけではない。なぜニクソンは破滅したのか、他人事ではない教訓を得られる映画でもある。

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ミッシング  Missing

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1973年、チャールズ・ホーマンというアメリカ人の若手ジャーナリストが、南米チリでの滞在を妻や友人とともに楽しんでいた。そこを、突然の軍事クーデターが襲う。チャールズは失踪し、家族と米国政府による慎重な捜索が始まった。結果は、誰もの想像を超えるものだった…。

本作はそんな本当に起きた話を映画化した作品。非常にショックな内容。観た後、背筋の凍るようなイヤ~な感覚がしばらく残る。全身から力が抜けていくような虚しさが残る。しかし同時に観てよかったとも思う。非常に見応えのある完成度の高い作品だ。

自分はバブル時代に学生時代をすごし、当時はいろんな途上国にも遊びに行った。そして、その後も仕事で途上国へ行くこともあり、それなりに危ないこともあった。しかし、今となっては楽しい思い出ばかりであり、今の若い人の中にも、好んで途上国や紛争国へ行く人がいるが、そういう人たちの気持ちもよく分かる。

しかし、ああいうところに行くには、一定のリスクが伴う。近年でも、イラクやアフガニスタンで、バックパッカーやNGO職員の若者が犠牲になったが、ああいうことは決して特別なことではない。ああいうことは、絶対に起きてはいけないことだが、途上国や途上国では、残念ながらいつでも起きる可能性があることでもある。

この映画は、そういう途上国、紛争国の一面を、静かな恐怖とともに伝えている。特に、最後の方で米国大使館の駐在武官が、チャールズの父に語る例えはとても教訓に満ちている(どういう内容かは、ぜい映画を観てください)。― 途上国、紛争国へ行くな、ということではない。しかし、そういう場所がどういうところかを、事前に了承した上で行く必要があるということだろう。

父親を演じるジャック・レモンが涙を誘う。主人公の妻役のシシー・スペイセックも切ない。ヴァンゲリスの音楽も、とてつもなく悲しい。 ― 悲しく、恐ろしく、そして重い映画である。そして、隠れた名作だと思う(※全く同名の映画がありますが、こちらはジャック・レモン出演、コスタ・ガブラス監督の作品です)。

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シャドー・メイカーズ   Fat Man and Little Boy

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現代の核爆弾とは、原子爆弾のことをいう。水素爆弾や中性子爆弾は、今では対費用効果の観点からほとんど実戦配備されていない。そして原爆には、プルトニウムを利用したタイプと、濃縮ウランを利用したタイプの2種類がある。製造方法と爆発機序が根本的に違う。この点は、1940年代から今に至るまで基本的に変わっていない。

原題のFat Man and Little Boyのうち、ファットマンとは長崎に投下されたプルトニウム型原爆を指す当時のあだ名で、リトルボーイとは広島に投下された濃縮ウラン型原爆を指すあだ名だった。両方とも爆弾の外見から、こんな滑稽なあだ名で呼ばれた。そして、この滑稽な名前の2つの爆弾は、今から64年前、一瞬にして数十万名の生命を地上から消し去った・・・。

本作は、この2つの原爆を開発したマンハッタン計画を率いた二人の米国人を主人公としている。一人は、政治的・軍事的リーダーシップをふるったレズリー・グローブズ陸軍准将(ポール・ニューマン)、もう一人は技術的リーダーシップをとったロバート・オッペンハイマーである。本作を観ると、この二人のいずれが欠けても、米国の原爆開発が「成功」しなかったことがよく分かる。

当時はナチスドイツも同様の計画を進めており、ドイツがこの技術を西欧地域に対して使用したり、もしくはソ連に技術が漏れる懸念もあったようだ。そういう意味で、二人は異常なプレッシャーの下で仕事をしていたのだが、それを上回るほどの異常な集中力で、二人は短期間のうちに計画を「成功」に導いた。本作は、その緊張感溢れるプロセスを、関係者の人間模様も交え、丁寧に描いている。

歴史にifはない。しかし、もし米国が原爆の開発に先行しなかったら、ナチスドイツが欧州で、さらには世界で覇権を握っていた可能性は否定できない。さらに、もしソ連が先行していたら、日本も共産圏に組み込まれ、結果的に北朝鮮のような国家体制になっていた可能性も否定できない。

だからといって、どこかの政治家のように米国が日本に原爆を投下したことを肯定するつもりはない。しかし、当時の原爆の開発状況は、極めて切迫した時間的問題であり、米国がマンハッタン計画で原爆を開発しなくても、どこかの他の国が開発に成功していたことだけは、間違いのない事実のようだ。

そういう意味で、ともに強烈な独裁国家だったドイツやソ連ではなく、民主主義と資本主義(自由市場主義)を標榜する米国が原爆の開発に先行し、結果的に戦後世界の覇権を握ったことは、世界にとってそれほど不幸なことだったかどうかは熟考する必要があるだろう。また、当時の日本が、当時のドイツやソ連とタメを張るほどの超独裁国家だったことも考慮しなければならない。

また、8月6日、8月9日がめぐってくる。こういう問題を改めて考える良い機会かもしれない。

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アメリカン・ヒストリー X   American History X

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この映画が高い評価を得ているのは、前から知っていた。しかし、バイオレンス物ということで敬遠していた。しかし今回観てみて、その考えが覆された。たしかにバイオレンス・シーンはある。しかし、アメリカとは何か、人間社会とは何かといった普遍的な問題について、現実的な問題提起をしており、大変クオリティの高い社会派映画だと認識を改めさせられた。

主人公デレクは、筋金入りの白人至上主義者。胸に大きなカギ十字のイレズミを入れ、白人至上主義組織の頭領として、ロスのダウンタウンの一角を仕切っている。黒人、ラテン系、ユダヤ人を、これでもかと罵り、徹底的に差別する。挙句の果てに、自宅を襲った黒人の車上荒らし数名を射殺、惨殺する殺人事件を起こす。しかし、数年後に出所したとき、彼は別人のように真っ当になっていた・・・。

事件前のデレクの言動がすごい。これでもかと、白人以外の人間を虫けら扱いして大声で罵る。とくにデレクの自宅の食卓で繰り広げられる議論(暴論?)のシーンは圧巻。黒人、ユダヤ系のお陰で、優秀な白人が失業する、社会的機会を奪われる、だから虫けらは出て行け!うせろ!消えろ!○×△$#&・・・!

しかし・・・、私はアメリカで暮らしていたことがあるのだが、もし仮にアメリカという国が、日本のような「普通の国」だったら、ある意味でデレクの言動はそんなに異常ではないと思うのである。たしかに、アメリカは移民に対してとても寛容だし、少数派(マイノリティ)を優遇するアファーマティブ・アクションなる「平等」施策を社会に広く適用して、学校や職場では、多数派(白人とかのマジョリティ)を押しのけてマイノリティが優先的に入学、就業する光景が日常茶飯事のように繰り広げられている。これに白人が怒り狂ったとしても、それほど異常なことではないと思う。

しかし・・・、アメリカという国は「移民の国」なのである。国の成り立ちからして、ヨーロッパのいじめられっ子のプロテスタントが、命からがら祖国から逃げ出して創設した国であって、建国後も、政治的自由、経済的機会を人間の普遍的人権として標榜し、それを世界で初めて憲法で法的に保障し、世界中のいじめられっ子を積極的にガンガン受け入れ、人間社会の理想を実現してきた、ある意味で大変マジメで立派な国なのである。

したがって、ここから繰り出される結論の一つは、「アメリカ人」というのは、特定の人種、民族、思想、価値観で規定される概念ではなくて、「アメリカの国籍を取った人」でしかないということだ。その意味で、「アメリカ人」、「アメリカ社会」の定義や概念というのは、今この瞬間も現在進行形で変化しており、それをストップモーションのように止めて保守的に堅持しようとするならば、それはアメリカという国の根本精神を否定する行為にさえなりかねないのである。

そして、もしそういうアメリカ人がいるとしたら、その人は自分がアメリカ人であることに自己矛盾を来たしているとさえ言えるということだ。その意味で、事件前のデレクの言動は、アメリカ以外の国の国民としては一理あったとしても、アメリカ人としては完全に的外れであり、それゆえに破綻を来たしたともいえるだろう。

一方、この映画のテーマは、アメリカとは何かというテーマから、人間社会とは何かという巨大なテーマにさえ肉薄しているような気がする。アメリカという国は、いろいろと批判される国でもあるが、何といっても自由と平等という理想を本気で追求するだけでなく、それを現実に実行(強行)している国でもある。

自由や平等というのは、実際に剥奪されてみないと、その本当の有難みを実感できないかもしれないが、これはまさに人間の基本的人権の中核を成す構成要素と言えるだろう。アメリカは、そんな人間の基本的人権を、極限まで保障しようと試みる試験管ベビーならぬ、試験管国家なのである。

本作は、そんなアメリカの限界と可能性、ひいては人間社会の限界と可能性を描いているような気がした。 ― なんて言ったら言い過ぎだろうか。久々に映画らしい映画を観ました・・・。

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大いなる陰謀  Lions for Lambs

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もはや何も言うまい、洋画の邦題については・・・。これも、原題の意図を外した邦題になっている・・・。最初に言っておくと、本作に「陰謀」は存在しない。

Lionsとは賢者、Lambsとは愚者のこと。前者は良識と勇気ある一部の国民を指し、後者は国を動かす政治家と官僚のことを指している。具体的には、政治家が始めた対テロ戦争に、国民がどのように関わってきたか、またどう関わるべきかということを言っている。

政治家が、自分をアピールするために不要な戦争を推進するのは、古今東西変わらない。そこで、こういう愚策に、国民がどう向き合うかが問題になる。ただ、シラけて無視するのか、それとも能動的に関わって現状を変革しようとするのか、どちらの態度を取るべきかというのが本作のテーマのようだ。

戦場の教え子を見守る大学教授にロバート・レッドフォード、対テロ戦争の新戦略を取材する記者にメリル・ストリープ、その新戦略を画策する政治家にトム・クルーズという豪華な陣容。この三人が、戦争の政策をめぐって火花を散らす。現代の戦争がどのように行われているのか、実務レベル的な冷めた視点で描いているのも、ハリウッド映画としては新鮮。

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