月別アーカイブ: 2009年10月

ルムンバの叫び   Lumumba

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邦題がどうしようもないが、1960年代のコンゴ独立時の首相、パトリス・ルムンバの半生記。とは言っても、スポットを当てているのは、彼が首相になる少し前から、暗殺されるまでの数年間。

国際社会は今も昔も、本質的に弱肉強食の下にあるが、本作が描く1960年当時は、植民地解放が真っ盛りで、それまでいいように搾取されてきたアフリカの植民地が、宗主国に下克上の挑戦状を叩きつけ、次々と独立を勝ち取って行った稀有な時代だった。

コンゴでは、パトリス・ルムンバが理想に燃えて独立運動を主導、熱狂的な国民の支持に支えられ、宗主国ベルギーからの独立を達成した。しかし、彼はまだ若く、経験不足とも見られていたので、ルムンバは首相にとどまり、ベテラン政治家のカサブブが大統領となる。

一方、国内では、資源に恵まれたカタンガ州のモイズ・チョンベが独立後のコンゴからさらに分離独立を図ったり、東西両陣営がコンゴの利権をめぐって介入を試みるなど外憂が続き、さらに社会経済政策の無策も重なって、国内の社会秩序はどんどん崩壊していく。

こうした中で急速に浮上してきたのが、当時コンゴ軍の参謀長だったモブツ・セセ・セコだった。急進的なルムンバは西側諸国から嫌われ、優柔不断なカサブブは頼りにならないと見なされる中、モブツはアメリカをはじめとする西側諸国の支持を得て、クーデターを敢行、指導者の椅子に座る。

この映画を観ると、ルムンバという青年政治家は、たしかに有能な資質を備えていたが、野卑な軍人政治家や、エゴ丸出しの大国と巧く渡り合うだけの政治的センスが欠けていたようだ。やっていることは間違っていなかったが、その手法が直情的だったため周囲から敬遠され、味方を敵に回し、最終的には国際政治の闇の中に消えていったという感じ。

そんな背景もあり、ルムンバの暗殺事件は、非常に不気味で後味の悪い事件だ。しかし、現代の国際政治も、こういう事件を黙認する暗い側面があり、ルムンバの一件は決して特殊な事例ではないような気もする。

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クール・ランニング  Cool Runnings

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常夏の国ジャマイカから、冬季オリンピックのボブスレーに代表選手が出たというのは、今でもうっすらと覚えている。本作は、1988年カルガリー・オリンピック大会に実際に出場したジャマイカ・チームの顛末を描いた実話に基づく作品だ。

コースを疾走するボブスレーのスピード感が凄い。走行中にボブスレーが横転して、ヘルメットが側壁に擦られながらコースを疾走するシーンなどは、自分の首が折れるような感覚に襲われる。その辺のリアリティが凝っている。

今は亡きジョン・キャンディが、コーチ役で出演。周りを固めるジャマイカのナショナル・チームのメンバーも個性豊か。他国チームからだけでなく、ジャマイカ政府、果ては家族からさえも、「やめろ、やめろ」と言われ続けながら、オリンピック出場を果たし、ついに・・・。あとは見てのお楽しみ。

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再見~ツァイツェン、また逢う日まで   我的兄弟姐妹

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日本映画をはじめ、アジアの映画はほとんど見ない。流行りの韓流なども全く興味がない。しかし、噂を聞いて、この中国映画を観てみた。

30代なかばくらいから、恥ずかしい話だが、とても涙もろくなった。テレビドラマを始め、生前あまりよく知らなかった人の葬儀などに出ても、なぜか涙が止まらなくなることが多い。そして、この映画は、始まった途端に涙が出てきて、最後まで涙が止まらなかった。とても、切なく、悲しく、感動的な作品である。

中国東北部の貧しい寒村で、4人のわんぱく兄弟姉妹が、優しい両親の下ですくすくと育っている。やがて一家を不慮の事故が襲い、みなバラバラになってしまう。しかし、20年近くの年月が経ち、兄弟姉妹は互いの行方を探り合い、ついに・・・。 ― 本作は、そんな中国の片隅で、けなげに生きる家族の姿を、素朴に誠実に描いている。テーマは、家族の絆ということか。

演出はそれほど緻密ではない。役者の演技もまあまあ。しかし、これだけ心に衝撃を受けるのは、スタッフやキャストの意気込みなのかもしれない。子供時代の兄弟姉妹を演じる子役たちも、とてもかわいらしく、見ているだけで泣けてくる。

おりしも、中華人民共和国は建国60周年を迎えた。この国の体制が、国民に与えてきた重圧と負担は、この映画でもサラッと描かれている。最近とみに経済発展の著しい中国だが、やはり一党独裁体制というのは、個人の思想を統制し、個人の能力を制限する体制だから、今後の経済発展も頭打ちになる可能性が高い。

しかし、それにも関わらず、中国のふつうの一般市民の人々は、今後もたくましく生きていくのかもしれない。本作は、そんな普通の人が持っている普通の思い、情けというものを、普通に描いている。しかし、なぜか強い衝撃を受け、心が洗われた。数年前に日本でも劇場公開されたらしいが、とても良い作品に出会いました。

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