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邦題がどうしようもないが、1960年代のコンゴ独立時の首相、パトリス・ルムンバの半生記。とは言っても、スポットを当てているのは、彼が首相になる少し前から、暗殺されるまでの数年間。
国際社会は今も昔も、本質的に弱肉強食の下にあるが、本作が描く1960年当時は、植民地解放が真っ盛りで、それまでいいように搾取されてきたアフリカの植民地が、宗主国に下克上の挑戦状を叩きつけ、次々と独立を勝ち取って行った稀有な時代だった。
コンゴでは、パトリス・ルムンバが理想に燃えて独立運動を主導、熱狂的な国民の支持に支えられ、宗主国ベルギーからの独立を達成した。しかし、彼はまだ若く、経験不足とも見られていたので、ルムンバは首相にとどまり、ベテラン政治家のカサブブが大統領となる。
一方、国内では、資源に恵まれたカタンガ州のモイズ・チョンベが独立後のコンゴからさらに分離独立を図ったり、東西両陣営がコンゴの利権をめぐって介入を試みるなど外憂が続き、さらに社会経済政策の無策も重なって、国内の社会秩序はどんどん崩壊していく。
こうした中で急速に浮上してきたのが、当時コンゴ軍の参謀長だったモブツ・セセ・セコだった。急進的なルムンバは西側諸国から嫌われ、優柔不断なカサブブは頼りにならないと見なされる中、モブツはアメリカをはじめとする西側諸国の支持を得て、クーデターを敢行、指導者の椅子に座る。
この映画を観ると、ルムンバという青年政治家は、たしかに有能な資質を備えていたが、野卑な軍人政治家や、エゴ丸出しの大国と巧く渡り合うだけの政治的センスが欠けていたようだ。やっていることは間違っていなかったが、その手法が直情的だったため周囲から敬遠され、味方を敵に回し、最終的には国際政治の闇の中に消えていったという感じ。
そんな背景もあり、ルムンバの暗殺事件は、非常に不気味で後味の悪い事件だ。しかし、現代の国際政治も、こういう事件を黙認する暗い側面があり、ルムンバの一件は決して特殊な事例ではないような気もする。