Happinet(SB)(D) (2012-11-02)
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1994年の春、ルワンダで大虐殺が起きたとき、ヨーロッパではボスニア紛争、アフリカではソマリア紛争が同時並行的に起きていた。国際社会は、ボスニア紛争で資金とエネルギーを吸い取られ、ソマリア紛争で米軍兵士が虐殺されるのを目の当たりにして恐れをなし、ルワンダの惨状を見て見ぬふりをして、結果的に見捨ててしまった。
国際社会がルワンダを見捨てたことは、この映画の中心的テーマの一つであり、それでこの点に怒りを覚える人も少なくないかもしれない。しかし、人間は倫理感よりも欲望で動く存在であり、また自分の命を犠牲にして他人を救う能力など、誰も持っていない。このことは、戦争に行ったことがある人や、紛争国などで身に危険が迫る経験をした人など、似た体験をした人はよく知っているだろう。
その意味で、この映画の描きたかった真のポイントは、国際社会や白人はケシカランということではなく、人間というのは弱い存在だ、だからそのことを忘れて高ぶってはならないという高慢に対する警告だろう。その意味で、本作は観る人すべての心を突き刺す作品でもある。
ルワンダ虐殺を誠実に伝える映画としても優れているが、人間というものの弱さ、はかなさをリアルに描いている点でも秀逸。ドン・チードルが死体累々の中を這いずり回って帰宅した後、着替えをするなか、ネクタイを締めながら崩れて落ちてしまうシーンは心を打つ。