月別アーカイブ: 2009年9月

ブッシュ  W.

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オリバー・ストーン監督のブッシュ前大統領の伝記映画。原題「W.」は、ブッシュ氏のミドルネーム、「ウォーカー(Walker)」のイニシャル。たぶん、アメリカ人の多くは、この一文字で誰を指しているか分かるから、こういうタイトルになったのだろう。

オバマ大統領の強烈なカリスマ性と人気に、今やブッシュ氏の存在は完全にかすんでしまった観がある。しかし、人気は時とともに移り変わる。オバマ氏のこれまでの最高の支持率は就任直後の68%だったが、ブッシュ氏は同時多発テロ直後に90%という驚異的な支持率を叩き出した。当時のブッシュ人気は、今のオバマ人気と比較にならないものだった。

本作は、ブッシュ氏の同時多発テロ直後からイラク介入に至るまでの様子を、青年時代の破天荒でヘタレの生き様もところどころ交えながら、心理描写も巧みに描いている。よく知られていることではあるが、ブッシュ氏は、もともと名門に生まれた「ぼんぼん」であり、勉強も仕事もあまりできない、性格的にも欠点の多い人である。しかし、この人には、どこか人を惹き付けてやまない人間的な魅力がある。本作は、そんな等身大のブッシュ氏を、風刺と愛情をもって描いている。

個人的に一番印象に残ったシーンは、酒浸りの生活を送っていたときに、神様に出会って回心する場面。信仰はブッシュ氏の人格の中核を成しているだけに、しっかり描かれている。ブッシュ氏の信仰は、本作ではやや風刺的なコメディ・タッチで描かれているが、それは彼のイラク政策が失敗に終わったからで、結果論だろう。実際には、ブッシュ氏はもっと真剣な態度で祈り、かつ真剣な態度で政策決定に臨んでいたのではないかと思う。

ブッシュ氏を演じたジョシュ・ブローリンの演技が凄い。もともと顔はあまり似ていると思えないが、喋り方や挙動、ちょっとした仕草が、笑えるほどそっくり。これは役者魂と努力の賜物なのだろう。繰り返してしまうが、勉強も仕事もできず、欠点も多いブッシュ氏を、これでもかとばかりリアルに演じている。食事中に口に物が入ったまま、要領の得ない発言を一所懸命繰り返す様などは、まさにブッシュ氏が目の前にいる感じ。こういう飾らない天然さに、人は惹き付けられるのかもしれない。

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ルディ  Rudy

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アメリカの田舎町に住むアメフト好きの少年が、努力を重ねて、自分の夢を実現するという実話を元にした映画。

少年ルディは背が小さく、勉強も得意でなく、まわりにいる兄弟や友人と比べても、とてもカレッジ・フットボールで活躍できるような器ではなかった。しかし、そんな彼が名門ノートルダム大学の超エリート・フットボール・チームを目指して、猛烈な努力を重ねる。

意思あれば、道開ける、ということを地で行ったようなストーリーだ。とにかく熱意と行動力が凄まじい。ノートルダムに入学し、さらにそこのアメフトのチームに入るという難関を突破するために、必要なあらゆる門を叩いて、叩いて、叩きまくる。勉強とアメフトの練習も、一切手を抜かない。

本作を観て思ったことは、自分の夢や目標をがむしゃらに追うことの尊さ。誰にでも心身の限界があり、また時の運や、様々な社会的な制約もあり、夢や目標が自分の想像どおりに叶うことは少ないかもしれない。しかし、夢や目標を目指して、がむしゃらに頑張る中に「成功」があると感じた。

目標を追う中で、もし手を抜いたり、途中放棄したら、それは結果に関わらず、その人の心に傷を残す。しかし、それを徹底的にやり抜けば、たとえ大失敗に終わっても、それはその人の中に「成功」体験となって、生きる力となるのかもしれない。

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バーン・アフター・リーディング  Burn after Reading

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ノー・カントリー、ファーゴを作ったコーエン兄弟の作品。サスペンス・コメディのテイストを持った不条理劇という点が、これらの作品と共通している。

とくにファーゴと似ていると感じたのは、同じ女優さん(フランシス・マクドーマンド)が出ているからか。ファーゴと本作に共通しているのは、不条理なドタバタ劇を通して、人間の弱さ、愚かさをドライに描いている点。人間は、どれほど社会的な地位があっても、優しい家庭人として歩んでいても、しょせん自己中心的で愚かな存在だということを改めて思わされる。

ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコビッチ、ティルダ・スウィントンといった大御所が、愚かでダメな人間を面白おかしく演じている。とくにブラピのアホ男の演技は衝撃的ですらある。こういう名優が、アホな人々を演じているのを観て、人間は一人ひとりかけがえのない存在だが、同時に愚かで弱い存在でもあると感じました・・・。

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ミート・ザ・ペアレンツ1&2  Meet the Parents

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ミート・ザ・ペアレンツを、1、2と続けて観た。一級のコメディである。興行成績も大変良かったと聞く。ベン・スティラーという役者の才能に目を見張った。

しかし・・・・、悪ふざけが過ぎると、笑えないという気もした。特に、2はひどい。デニーロに加え、ダスティン・ホフマン、バーブラ・ストライザンドといった超超豪華キャストだが、全然笑えない・・・。

その理由は、ここでは立ち入って書くまい。コメディのセンスは超一級なのだが、やはり超えてはいけない一線というものがある。それを、この作品は超えている。1は控えめだが、2では思いっきり超えている。それはエッチだとか、そういうことではない。もっと深刻な問題だ。

良い点を最後に書くと、やはりコメディのセンスが光っている。とくに1は良い。主人公の名前のおかしさはネイティブでないと、あまり笑えないと思うが、真面目な顔で名前を呼ぶ様には、笑いをこらえることができない。2作品を観終わって、複雑な気持ちに満たされた。

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クリップス  Redemption: The Stan Tookie Williams Story

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ロサンゼルスで暗躍するギャングの中でも最大のグループ、クリップスを創設したスタン・トゥッキー・ウィリアムズの半生を描いた作品。ジェイミー・フォックスの好演が光る。

貧困と暴力の渦巻く60年代のロスのダウンタウンで、自衛を目的に創設された一種の青年自警団が、クリップスの始まりだった。しかし、組織は徐々に自衛の枠を超え、マフィアにも似た犯罪集団へと変質していく。そうした中、スタン・ウィリアムズも、立件されているだけで4名の殺人事件に加担し、この最強ギャング団の象徴的存在となっていく。

その後、警察の執拗な捜査でウィリアムズは逮捕され、ついには死刑判決を受ける。しかし、彼は長い刑務所生活の中で回心し、あるジャーナリストとの出会いを通じて、青少年向けの本を執筆することになった。ギャングでの生活を通じて、暴力や犯罪がいかに人生を破壊するか警告し、子どもたちが自分と同じ道を歩まないよう切々と訴える内容だった。結果的に、この本は世界中でベストセラーになり、さらには獄中にいながら、ノーベル平和賞、文学賞の候補としても名前が挙がるようになる。

本作は2004年の制作で、ウィリアムズがまだ獄中にいることをエンド・クレジットで説明している。しかし、翌2005年、彼はカリフォルニア州の刑務所で、嘆願などのあらゆる法的な方策も尽き、死刑を執行された。

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