月別アーカイブ: 2009年4月

ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ        Lock Stock and Two Smoking Barrels

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長いタイトルだ。もともと英語には、lock, stock and barrelという成句がありまして(全部、すっかり等の意味)、さらにこの成句の各単語は、もともとライフルの銃身、銃床など、ライフルの各部分を指す言葉でもあります。

そして最後まで見ると、このタイトルとストーリーの中身がぴったりマッチしていることが分かり、なんとオシャレなタイトルなのかと感動するのであります。ま、そんな説明はここまでにして…。

イギリス版「パルプ・フィクション」といった感じ。いや、パルプ・フィクションよりも構成が凝っている。こういう制作側の「努力」が伺える作品が好きだ。低予算と聞いたが、頑張ればここまで面白い映画が作れるという手本でもある。話の筋書きだけでなく、カメラワーク、編集、音楽も秀逸。

本作のもう一つの楽しみは、コックニーを楽しめるというもの。本作では、英語をしゃべっているのに、英語の字幕が出る箇所がある。それだけ、イギリス人でも分からない表現、発音なのだということなのだろう。

監督のガイ・リッチーは、マドンナの元旦那さん。最近はどうも仕事も不調らしいが、ぜひまた面白い作品を撮ってほしいものです。

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ジャーヘッド   Jarhead

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戦争映画というより、戦争に一兵士として参加したアメリカ人青年の個人体験記という風合い。

主人公が経験した戦争は湾岸戦争。湾岸戦争というと、ついこの間の戦争のような気がするが、もう18年前になる。つまり、いま高校を出て就職したり、大学に入っている子(?)たちが生まれた年の戦争である。もうかなり昔の話である。

さて本作であるが、主人公の個人的物語だけあって、派手な戦闘シーンはあまりない。しかし、これが戦争の現実というものなのだろう。冒頭の訓練の様子も、フルメタルジャケットのようなハチャメチャ振りはない。たぶん、実際もこんな感じなのであろう。派手さはないが、その分、兵士たちの心理描写、背景説明などに気を遣っている。

ジャーヘッドとは、アメリカ海兵隊の俗称。アメリカの海兵隊は、世界のどこかで戦争が起きれば真っ先に投入される陸海両用の「殴りこみ部隊」として名高い。そういう意味で、海兵隊はアメリカ社会では独特の尊敬の対象でもある。そんな背景も合わせて本作を見ると、また違った見方もできるかも知れない。

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アビエイター  Aviator

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困った邦題だ。アビエイターではなくて、エビエイターである。アメリカ人の前で、アビエイター、と100回言っても100%通じない。また、この単語を習う中高生も、この単語を「エビエイター」と覚えるはずだ。

なんでこの問題にこだわるかというと、本作をレンタル屋や探したり、アマゾンで検索するとき、直感的に「エビエイター」で探しても、絶対に見つけられないからです。そういう意味で、この邦題は興行的に損なタイトルだ。ま、この問題はこのへんで。

さて本作は、世界最大級の億万長者にして航空王として名をとどろかせたハワード・ヒューズの半生を描いた作品。いつもどおり、ディカプリオの演技は素晴らしい。とくに本作では、ヒューズがだんだん精神を病んでいく様子を、鬼気迫る演技で演じている。

ケイト・ブランシェットもキャサリーン・ヘップバーンの役で出ており、こちらも良い。とくに、二人がヘップバーンの実家に行って家族全員でランチを食べているときに、会話が微妙に食い違い、場の雰囲気が徐々に壊れていく様子の演技は、出演者全員に二重丸という感じ。

本作で特に興味をそそられたのは、やはりヒューズの精神状態というか、心の病の問題。なぜ彼が心を病んだのかは、あまりよく知らない。でも、映画を観る限り、彼が莫大な遺産を相続し、なんの苦労もせずに大金を手にしてしまったことで、人とうまくやっていくための社会性を身に付ける機会を失ってしまったことが、心を病んだ原因の一つではないかという印象をうける。

事業の才覚や飛行機設計の才能は、人並み外れたものがあったようだ。そして資金もあったから、そういう意味では大成功した。しかし映画でも描かれている通り、晩年は大変不幸だったようだ。一人の人間の人格の深みを描いているという点で、本作を大変興味深く観ました。

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狼たちの午後  Dog Day Afternoon

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アル・パチーノという役者は、演技は大袈裟だが、それはそれで味わい深い印象を残す個性的な役者である。ゴッドファーザー、セント・オブ・ウーマン、ヒートなどが好きな出演作だが、いずれも複雑な人格を持った人物像を表現するのが実に巧い。

本作では、実際にあった銀行強盗事件を描いているが、ここでの演技もすばらしい。同時に、早世したジョン・カザールの神経質な相方役の演技も印象的だ。ジョン・カザールは、ゴッド・ファーザー、ディア・ハンターなどにも出演しており、パチーノやデニーロとの相性が良い。早世したのは残念である。

本作を初めて見たのは、かなり昔、深夜にテレビ放送していたのを見たのが最初だったと記憶している。後半で主役の個人的な側面がさらけ出され、こちらはちょっと気分が悪くなるが、パチーノとカザールのコンビネーション、パチーノの人質とのやり取りなどでは、一人ひとりの心理を丁寧に描写しており、それが作品としての奥行き、味わい深さを出している。

それにしても、「狼たちの午後」という邦題、なんとかなりませんかね。Dog Day Afternoonという原題は、犬とも狼とも何の関係もありません。dog dayというのは、盛夏、真夏、という意味なんですね。このタイトルの雰囲気は、銀行内で犯人や人質が汗だくになって、どんどん消耗していく様子からもリアルに伝わってくる。

dog dayと言われても、ネイティブは犬も狼も想像しないでしょう。それは、われわれ日本人が猫舌、と言われても、頭の中に猫の顔が浮かんでこないのと同じです。そのくらいdog dayと、dogは概念の違う言葉です。こういう邦題は、どうしても気になります・・・。

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父親たちの星条旗   Flags of Our Fathers  

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硫黄島の戦いで、米兵数名が擂鉢山(すりばちやま)の頂上に星条旗を打ち立てた瞬間を捉えた写真、またそれを描写したモニュメントはあまりに有名である。本作は、その星条旗を立てた数名のうち3名の凱旋後の人生を描いている。

3名の兵士は、この一瞬の行為によって、全米で英雄に祭りあげられる。戦費調達のための戦時国債の営業に駆り出され、アメリカで彼らを知らない人はいないというところにまで有名になり、とことん美化される。しかし、そんな戦争がもたらす熱狂もあっという間に去り、今度は普通の生活に戻るよう、3人の環境はめまぐるしく変わる。

こういう周囲の取り扱いの激変を、ある者は冷静に捉えて順応し、ある者はそれで精神に変調を来たす。そんな3人それぞれの心理描写が秀逸。イーストウッドの細やかな演出に、再び脱帽。戦争の地獄と、人生の厳しさを描いた名作です。

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