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マージン・コール  Margin Call

<あらすじ>2008年のリーマン・ショックを題材に、ニューヨークの巨大投資銀行が、瞬く間に崩壊するまでの24時間を描いた社会派サスペンス・ドラマ。

投資銀行のリスク部門担当者が、前日に解雇された上司から警告を受けて自社の資産状況を調べたところ、自社が持つポジションと資産のバランスが危うい状態にあり、会社がすぐにも倒産しかねないことを知る。深夜に上司が次々と社内に呼び込まれ、役員会が開かれ、幹部たちは想像を絶する決断を下す・・・。

マージン・コールとは、投資家が保有する売買ポジションに対して、相場が大きく変動して含み損が許容水準を超えてしまいそうな時に、追加金を上乗せしてポジションをそのまま保持するか、もしくは即刻解約するかを迫る投資業者から投資家への緊急連絡のこと。

作品では、マージン・コールの状態が生じた巨大投資銀行が、次々と大きな決断に迫られる24時間を描いている。観ている方は、胃が上に上がってくるようなイヤーな緊張感に襲われる。それでも面白さに惹き込まれて、途中で観るのを止めることができなかった・・・。

投資銀行の会長に、ハゲタカ風の冷酷な風貌のジェレミー・アイアイズ。切れ者の幹部役員にデミ・ムーア。マージン・コールに対応する総責任者にサイモン・ベイカー。他の作品では爽やかな好青年を演じること多いが、本作では血も涙もない肉食系の金融マンを演じている。そして、混乱の処理に翻弄される役員に、ケビン・スペイシー。人間的だが、どこか人として壊れている役を好演。

日本で劇場公開されなかったのがウソのような良作。何か金融界と利害関係があったのだろうか。正直言って、ウォール・ストリートよりも面白かった・・・。大物役者のガチンコ演技、人間同士の欲がぶつかり合う醜さと、ニューヨークの夜景の無機質な美しさのコントラストも、作品の奥行きを醸し出している。
 

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ウォール・ストリート  Wall Street: Money Never Sleeps

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前作「ウォール街」は1987年の制作で、いわゆる株式大暴落のブラックマンデーの直前のバブル期に公開された。そういう意味で、前作はバブルの光と闇を単刀直入に描いていた。しかし本作は、リーマン・ショック後の2010年の制作で、金融市場の無情と、そこに横たわる人間心理の複雑な様相をストーリーの下地に織り込んでいる。

本作は前作のストーリーからお話を引き継いでいて、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が、インサイダー取引と証券詐欺罪で8年の懲役の後出所したところから始まる。

疎遠になっていた娘ウィニーとの関係修復にとりかかるゲッコーだったが、ウィニーは強欲な犯罪者の父親を毛嫌いしていた。そんな中、ゲッコーはウィニーの婚約者でウォール街で一旗揚げようとしている野心家の青年ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と出会う。娘との和解、ジェイコブとの親交と通して、自分の仕事とプライベートがジェイコブとウィニーによって影響されることに若干の心理的抵抗を覚えたゲッコーだったが…。

子どもというのは、泣き所だ。自分がどれほど堅固な価値観を持っていても、子どもの運命が翻弄されたら、自分も翻弄されずにはいられない。ゲッコーも、無敵の価値観で金融市場で勝ち続けてきたが、子どもの問題となると、どうもペースが狂ってしまう。

前作では、市場経済の世界で無感情に利益を摘み取る金融サイボーグのようなゲッコーだが、本作では血の通った人間であることが、赤裸々に描かれている。この点が、前作と一線を画すポイントでもある。金融サイボーグのゲッコーの人間的側面が垣間見える骨太の良作といえるだろう。

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ソーシャル・ネットワーク  Social Network

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フェイスブック創業の経緯を、創業者で現CEOのマーク・ザッカーバーグを中心に描いている。ザッカーバーグ氏は、周囲の知恵や力を借りて、ときには友人までも利用して、いろんな無理をしながらフェイスブックを創業したと批判されることが多い。変わり者だ、人間として欠落していると言う人もいる。

そして、この映画作品でも、そういう彼の裏の側面が描かれている。しかし、それでもやはり本作を見て、フェイスブックはザッカーバーグ氏によって創業され、ザッカーバーグ氏によって、ここまで成長できたのだという印象がますます強くなった。

その理由は、まず彼が一人のコンピューター・エンジニアとして、周囲よりも遥かに技術的に卓越していたという点が挙げられる。ハーバード大学内の女子学生を美人コンテスト風に、学内の投票でランキングするというアイディアは、他の学生も少し思いついていたようだ。しかし、実際にそのアイディアをプログラムに組み、ネット上にアップロードしたのはザッカーバーグ氏だった。

また、このシステムを学外へ広げ、現在のフェイスブックに近いビジネスモデルにしようと考えたのは、おもに他の学生たちだった。しかし、実際にプログラムを拡張・変更し、外部一般から莫大なトラフィック(アクセス)を集めるだけのサイトを作り上げたのもザッカーバーグ氏だった。

また、ビジネス面においても、広告収入に頼って、短期的な利益を上げる安易なアイディアを退け、サイトのクオリティーを上げることで、巨額の支援資金を引き寄せるという現在の圧倒的な成功に至る路線を主張し、その難しい路線を軌道に乗せたのもザッカーバーグ氏だった。

巨額の資金を方々から集め、著名な資金協力者からの猛烈なプレッシャーにもめげず、様々な誘惑にも打ち勝ち、ひたすらサイトのクオリティーを上げることで、参加者と資金を増やすという、当たり前だが一番難しく、ストレスが溜まる地味な仕事にコツコツと取り組んだのもザッカーバーグ氏だった。

周りにいた友人や「協力者」たちは、彼を支援しているようで、実際には彼を妬んだり、足を引っ張っているだけで、建設的なことはほとんど何もしなかったように見える。― ザッカーバーグ氏は、たしかに毀誉褒貶の多い人物のようだが、フェイスブックという巨大事業が、やはり彼の功績によって誕生し、成長し続けているという事実が、この映画を見ると浮き彫りになってくる。

たぶん、彼と同じくらいの技術的な才能を持った人は、世の中に大勢いるだろう。また、彼と同じくらいビジネス感覚に優れた人も大勢いるだろう。彼と同じくらいプレッシャーに強い人もいるだろう。また、彼と同じくらいこの世の誘惑に抵抗できる人もいるだろう。しかし、これらすべての素養を兼ね備えた人は、彼しかいなかった。そういうことが、この映画を見るとよく分かります。

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ウォール街   Wall Street

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ウォール街の中堅証券会社に勤務する若手ディーラー、バド(チャーリー・シーン)は、毎日まじめに営業攻勢を顧客にかけるも、努力が徒労に終わる無為な日々を送っていた。そこに、伝説の大物ディーラー、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)に接触するチャンスをつかむ。バドは危ない橋を渡りながらも、ゲッコーに取り入ることに成功し、将来がどんどん開けていくが…。

証券会社のディーリングルームには、前時代的な巨大モニターが並び、ディーラーはデカい携帯電話を片手に怒鳴り散らしている。証券取引所では、トレーダーが紙切れを片手に、注文を大声で確認し合っている。こういう光景は、もはやない。しかし、この映画には経済戦争の最先端の緊張感がリアルに漂っており、その本質は今も昔も変わらない。

圧巻なのは、ゲッコーが買収先企業の株主総会で行うスピーチの場面。「強欲は善であり、強欲は物事の本質をえぐり出す」など、市場原理で動く資本主義の本質を明確に語り、聴衆を圧倒する。ある意味、誤った見方だが、別の意味では正しいから、聞いている方は納得してしまう。

オリバー・ストーン監督、1987年の制作作品。当時のハリウッド映画は、戦争、恋愛、SFというのが大半を占めていたが、経済をテーマにした作品が出てきたことで人目を引いた。とくに同年10月には、歴史的なニューヨーク株式市場の大暴落(ブラック・マンデー)が起き、そういう意味でも注目を浴びた。続作が間もなく公開される。

ザ・バンク 堕ちた巨像  The International

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国際金融機関の底なし沼のような巨悪を描いた力作。 ― とは言っても、こういう映画は、いかにもスケールが大きくてビックリという期待もあるかもしれないが、本当は現実の方が映画を遥かに上回っている。

この映画では、IBBCという国際金融機関が出てくるが、現実にはかつてBCCI(Bank of Credit and Commerce International)というそっくりな業態の銀行があった。BCCIは似たようなスキャンダル(イラン・コントラ事件)が明るみに出て大騒ぎになり、当時のホワイトハウス中枢にまで捜査の手が伸びた。何人かの現職・元職の閣僚が刑事告訴され、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領の足元にまで捜査が及んだ。本作は、そこまでの次元にまで話を広げていない。たぶんそこまでやったら、かえってストーリーが嘘くさくなるから、やめたのかもしれない。

このように、はっきり言って、映画としては抑制が効きすぎており、迫力はあまりない。しかし、途中で出てくるニューヨークのグッゲンハイム美術館での銃撃戦は圧巻。ニューヨークに観光とかで行ったことのある人なら、あのデンデン虫のような特徴のある建物に行ったことがあるかもしれないが、本作では激しい銃撃戦で、美しい内部が蜂の巣だらけ。シャンデリアも全壊。どうやって撮ったのだろう。一部CGかな(※)?

クライブ・オーウェンとナオミ・ワッツが好演。元シュタージ(東独の秘密警察)のお爺さんの独白も妙に耳に残る。映画として、微妙に現実の事件と話を絡めながら、もっとリアリティを出してほしかった。しかし、それができないほど、BCCI事件というのはヤバイ事件だったのかも。

※後日よく調べたら、これはグッゲンハイム美術館の実物大のセットを作って撮影したとのこと。こういうところが、ハリウッドは発想が違う。悪いけど、日本映画にはない発想という気がします・・・。

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