売り上げランキング: 28,473
「グリーン・ゾーン」とは、イラクの首都バグダッド中心部にある米軍本部とイラク政府の中枢が集まる安全地帯のこと。本作は、グリーンゾーンの中で渦巻く政治と、最前線で大量破壊兵器の捜索に当たる米軍将校(マット・デイモン)の対決を描くポリティカル・サスペンス。
イラク戦争の大義は、フセイン政権による大量破壊兵器(実質的に核兵器)の開発を止めさせるという点にあった。しかし、探せど探せど、そんな形跡は見当たらない。今でこそ、ブッシュ政権は、目障りなフセイン政権を除去する目的で、大量破壊兵器という介入の言い訳を、半ばでっちあげて開戦に踏み切ったことは周知の事実だが、誰も当時はそんなことは知らなかった。
本作では、通常の軍の指揮系統の中に、CIAや国防総省の幹部が良くも悪くも深く介入してきて、戦争政策を様々に軌道修正、もしくはねじ曲げていく様子が描かれている。そんな様子は、報道で漏れ伝わってくるイラク戦争の実態と妙に一致していてリアリティを感じさせる。
本作は、銃をドンパチ撃ち合うアクションというよりも、戦争の方針を巡り、激しい綱引きを繰り広げる軍やCIA、国防省幹部の心理戦を描くサスペンス。だからこそ、見ごたえのある作品に仕上がっている。