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デンジャラス・ラン  Safe House

デンジャラス・ラン [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2013-06-26)
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<あらすじ>南アフリカ・ケープタウン。諜報活動の最前線から遠く離れたこの地で、CIAの新米職員マット・ウェストンは隠れ家の管理という閑職に辟易していた。ある日、大物犯罪者が護送されてきた。

その男の名はトビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)。元CIAの超エリート諜報員にして、今は国家機密を密売する危険人物として世界中から指名手配を受けていた。そんな時、隠れ家が武装した男たちに襲撃される。命からがらマットはフロストを連れ出すが…。(goo 映画より)

原題はSafe House、つまりCIAが外国で活動している際に、重要参考人などを一時的に秘密裏に拘束するために設けられた隠れ家、住居施設のこと。冒頭シーンは、このトビン・フロストをセーフハウスで尋問するシーンから始まるが、ストーリーの大半はフロストと、セーフハウス担当官の二人の逃避行が描かれているので、「デンジャラス・ラン」というのもうなずける。でも、Safe Houseという無機質な語感の原題の方が、本作の背筋が凍るようなサスペンスタッチを表していて、作品にフィットしている。

しかし、CIAというのは諜報機関のはずなのだけど、ここまで多くの映画に描かれるとは、さすがアメリカは民主主義の国と言わざるをえない。冒頭からリアルなウォーター・ボーディング(水責め)のシーンが出てくるなど、CIAはこんな感じでイラクでも活動していたのだなと、なんとも言えない感覚に襲われる。

伝説のエージェント、トビン・フロストを、新米のCIA職員が命からがら護送するのがストーリーの縦軸。一方で、CIAというのはスパイ機関だから、内と外に二重三重の騙し合いがあり、誰がまともで、誰が裏切り者なのかわからない心理戦が横軸になっている。この二つの伏線が微妙に絡み合いながらストーリーが進んでいく。

いろいろアクションシーンや、暴力シーン、心理戦などがたくさん出てくるのだけれど、一番怖いのはラストシーン。すごく微妙なので一回観ただけではよく分からないかもしれないが、よーく観るとマジで背筋が凍る。ある意味、どんでん返しでもある。人間不信にならないようにしたいものですw

チャイナ・シンドローム   The China Syndrome

チャイナ・シンドローム コレクターズ・エディション [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2010-09-22)
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原発事故を扱った社会派ドラマ。題名は、原子炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こしたら、放射性物質が地球の中心を突き抜けて、(米国から見て)地球の裏側の中国に達するというブラックユーモアに由来する。

本作は、今からちょうど32年前の1979年3月16日に全米で公開されたが、その12日後の28日に、いま盛んに報道されているスリーマイル島の原発事故が発生した。自分は今でも当時のことを鮮明に覚えているが、現在の日本の福島第一原発の状況は、それに匹敵する規模の事故だと報道されている。

映画作品として、非常に良くできている。原子力のことを詳しく調べて作っており、また原子力の推進派と反対派、そのどちらにも属さない人々の利害関係や確執も、分かりやすく描いている。また、この手の作品にありがちな大袈裟な描写がないところも、静かな迫力と恐怖感を醸し出している。

キャストも、ジャック・レモン(原発の技師)、ジェーン・フォンダ(テレビレポーター)、マイケル・ダグラス(カメラクルー)と磐石。ストーリー構成、カメラワーク、配役など、すべてをとっても、はっきり言って欠点のない作品。これを観ると、原発の恐ろしさも分かるが、私たちの日常生活が原発の上に成り立たっている現実もよく分かります。

ジョンQ-最後の決断-   John Q

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感動する映画、泣ける映画というのは、世間にたくさんあるだろう。しかし、すべての人を泣かせる映画というのは、そんなにない。そんな貴重な一作がまさにこれ。

ジョン・クインシー(Q)・アーチボルトは、不況のあおりを受けて、リストラの対象となり、経済的な苦境に陥る。そんな中、一人息子のマイキーが心臓病で倒れた。息子を助ける道は、ただ一つ、心臓移植しかなかったが、想像を絶する多額の費用が必要となった。多くの寄付を受け、息子の心臓移植への道が少しずつ拓かれていたが、彼の命を救う唯一の可能性もついに絶たれる。そこで、ジョンQが取った最後の決断は…。

多言は要すまい。とにかく観てほしい。こんな状況に陥ったら、人はどういう行動を取るのか。この映画には悪人が一人も出てこない。誰もが、自分の身を守ることで精一杯の小市民ばかり。そんな中、一人の男が究極の選択を強制された。自分を主人公に置き換えてみると、人間の命の重さというものが理屈抜きで迫ってくる。「感動」という言葉を超えた名作。

正義の行方  Crossing Over

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2010-06-02)
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アメリカの移民問題がテーマ。移民取締局のエージェントを、ハリソン・フォードが演じている。アクションものと思って見たが、実際は米国の違法移民の悲哀を描いた純然たるヒューマン・ドラマ。

言うまでもなく、アメリカは建国以来ずっと移民国家だが、全世界から無制限に移民を受け入れているわけではない。当然のことながら国内法で移民に関する規定を設け、一定条件を満たした人だけ、自国民に帰化させる手続きを取っている。

しかし、アメリカの経済力、政治的な自由は、全世界から困窮した人々を惹き付けてやまない。そのため、違法移民の問題が常態化しており、どの違法移民を取締り、どの違法移民に目をつぶるかというレベルにまで、許容範囲がズルズルに広がっている。

国籍や市民権を得るのに、ここまでするのかというエピソードが目白押し。胸が悪くなるエピソードもたくさん出てくるが、自分の友人にも苦労してアメリカ人になったアジア系の友人がおり、こういう話は多分本当だろうというリアリティが漂っている。

インビクタス Invictus

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]
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心揺さぶられる映画である。南アフリカの人種対立の歴史を背景に、アパルトヘイト廃止直後、またネルソン・マンデラの大統領就任直後に、南アのラグビーチームが、ワールドカップのチャンピオンを目指す過程を描いている。

マンデラは大統領就任後、黒人の権利回復と同時に、人種間の融和と和解を、深い思慮と英断で、二つ同時に実現した。この二つは、現実的に考えれば、両立することは不可能だが、マンデラは経験と思慮と勇気によって、同時に達成した。その中に、ラグビーのワールドカップがあったわけだが、そこには旧南アの象徴とも言える金と緑のカラーリングのナショナルチームのユニフォームを変更しないなど、細かい問題をおざなりにしない、深い思慮があった。

モーガン・フリーマン演じるマンデラが、自らをかつて破滅させようとした敵を許すことの難しさと大切さを、説得力をもって語りかけている。