月別アーカイブ: 2011年8月

パシフィック  The Pacific

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スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクスらの共同監督による第二次世界大戦の太平洋戦線を、米軍の視点から描いた長編テレビドラマ。アメリカでは昨年放映されたが、日本では今夏初めてDVDとブルーレイが発売された。

最前線を戦った3名の海兵隊員の手記をもとに、ガタルカナル、ペリリュー、硫黄島、沖縄と続く太平洋戦線における転戦の様子が描かれる。手記を書いた3名も、そのまま実名で登場する。いたずらに米軍を美化したり、日本軍を軽視、蔑視することなく、米軍による残虐行為もしっかり描かれている点が、これまでの似たテーマの作品と一線を画す。

また、本作のもう一つの特徴は、戦争によって兵士一人ひとりの肉体も傷つくが、同時に心も傷つき、精神が崩壊していく様子も等価に描いている点。3名の海兵隊員のうち一人は、精神病棟への入退院を繰り返し、もう一人は、もともと特に高潔な心を保っていたが、様々な戦場体験により、心がケダモノのように変化していく。

戦争が、観念的な意味ではなく、本当に地獄だということが改めてよく分かる作品。そんなわけで、途中には心が落ち込むシーンも多い。しかし、最後まで見ると、なぜか心の中に清涼感が広がっていく。それは、監督のストーリー構成における手腕によるところもあるのだろう。

スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクスの共同監督による作品には、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を描いた「バンド・オブ・ブラザーズ」がある。こちらもリアリティ重視の長編作品。比べて観るのもおもしろいかもしれない。

ウォール・ストリート  Wall Street: Money Never Sleeps

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前作「ウォール街」は1987年の制作で、いわゆる株式大暴落のブラックマンデーの直前のバブル期に公開された。そういう意味で、前作はバブルの光と闇を単刀直入に描いていた。しかし本作は、リーマン・ショック後の2010年の制作で、金融市場の無情と、そこに横たわる人間心理の複雑な様相をストーリーの下地に織り込んでいる。

本作は前作のストーリーからお話を引き継いでいて、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が、インサイダー取引と証券詐欺罪で8年の懲役の後出所したところから始まる。

疎遠になっていた娘ウィニーとの関係修復にとりかかるゲッコーだったが、ウィニーは強欲な犯罪者の父親を毛嫌いしていた。そんな中、ゲッコーはウィニーの婚約者でウォール街で一旗揚げようとしている野心家の青年ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と出会う。娘との和解、ジェイコブとの親交と通して、自分の仕事とプライベートがジェイコブとウィニーによって影響されることに若干の心理的抵抗を覚えたゲッコーだったが…。

子どもというのは、泣き所だ。自分がどれほど堅固な価値観を持っていても、子どもの運命が翻弄されたら、自分も翻弄されずにはいられない。ゲッコーも、無敵の価値観で金融市場で勝ち続けてきたが、子どもの問題となると、どうもペースが狂ってしまう。

前作では、市場経済の世界で無感情に利益を摘み取る金融サイボーグのようなゲッコーだが、本作では血の通った人間であることが、赤裸々に描かれている。この点が、前作と一線を画すポイントでもある。金融サイボーグのゲッコーの人間的側面が垣間見える骨太の良作といえるだろう。

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