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レバノン  Lebanon

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中東の小国レバノンでは、これまで幾度も戦争が繰り返されてきた。本作は、そのうちの1982年にレバノンにイスラエルが侵攻したときの戦争を扱った作品。イスラエルは、それまで何度も国内テロに脅かされてきたが、その主犯のパレスチナ人のグループが隣国のレバノン国内に潜伏していることを突き止め、容赦のない対テロ作戦をレバノンで展開した。

戦争映画のカナメは、そのリアリティにあると思うが、本作は監督自身がこの侵攻作戦に軍人として参加したことから、そもそもケチの付けようがない。一つの街を空爆で潰し、そのあとで戦車部隊が入り、残党を殲滅する凄惨な光景は、本当にこういうことがあったのだということを、観る者に納得させる力がある。

本作の特徴は、すべての映像がイスラエル軍の戦車の内部と、戦車のスコープから見た外界の様子だけに限られている点。それだけに、全編を通じて重苦しい空気が充満しているのだが、かえってそのことで観ている者も、あたかも中東の凄惨な戦場の中に閉じ込められているような気分になる。

情け容赦のない冷徹な部隊長、リーダーシップの欠けた戦車の司令官、生意気な砲弾係、葛藤に苦しむ繊細な射撃係など、登場人物の心理描写が細やかで丁寧なところも、作品としての厚みを加えることに貢献している。戦争は地獄だということが、言葉を超えて実感できる一作。

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チャイナ・シンドローム   The China Syndrome

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原発事故を扱った社会派ドラマ。題名は、原子炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こしたら、放射性物質が地球の中心を突き抜けて、(米国から見て)地球の裏側の中国に達するというブラックユーモアに由来する。

本作は、今からちょうど32年前の1979年3月16日に全米で公開されたが、その12日後の28日に、いま盛んに報道されているスリーマイル島の原発事故が発生した。自分は今でも当時のことを鮮明に覚えているが、現在の日本の福島第一原発の状況は、それに匹敵する規模の事故だと報道されている。

映画作品として、非常に良くできている。原子力のことを詳しく調べて作っており、また原子力の推進派と反対派、そのどちらにも属さない人々の利害関係や確執も、分かりやすく描いている。また、この手の作品にありがちな大袈裟な描写がないところも、静かな迫力と恐怖感を醸し出している。

キャストも、ジャック・レモン(原発の技師)、ジェーン・フォンダ(テレビレポーター)、マイケル・ダグラス(カメラクルー)と磐石。ストーリー構成、カメラワーク、配役など、すべてをとっても、はっきり言って欠点のない作品。これを観ると、原発の恐ろしさも分かるが、私たちの日常生活が原発の上に成り立たっている現実もよく分かります。