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ニクソン NIXON

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リチャード・ニクソン大統領は、ベトナム戦争を終わらせ、中華人民共和国との国交を樹立したといった大きな功績を残した大統領だったが、おそらく米国史上で最も人気がなく、最も惨めな辞め方をした大統領の一人として記憶されているのではないかと思う。本作は、そのニクソンの伝記映画。

ニクソン自身に人気がなかったから、本作はたぶん同じオリバー・ストーンが監督した「JFK」などに比べても、大変知名度が低い。しかし、映画としての完成度は高いように感じた。とくにニクソンの内面的な個人的苦悩を非常に丁寧に描いている。

苦労人気質、田舎者気質が抜けないので、東部のエスタブリッシュメントに受け入れられない。人との関わり方が分からないので、多くの敵を作り、ついつい孤立してしまい、薄暗い秘密主義や陰謀の世界を自ら作り上げてしまう。そして、ついには自ら破滅への坂道を転げ落ちていく・・・といった経過を丁寧に描いている。

印象的なのは、辞任を決意した直後、キッシンジャーとともに、神に祈るシーン。無神論者とみえるユダヤ人のキッシンジャーは、ニクソンに強く請われて一緒に祈るのだが、神に対して心情を吐露するニクソンをわきに、大いに困惑する。しかし、ニクソンは子どものように泣きながら、自分がなぜ破滅したのか、どうすればよかったのか、切々と神に訴え、問いかける。

アメリカの大統領は、米国だけでなく、世界の政治経済を左右する権力を一手に握っている。だから当然、そこには無数の人の欲望や思惑がうごめき、互いに利用し、利用されるようなドロドロの暗闘が繰り広げられる。しかし、誰もがニクソンのような末路をたどるわけではない。なぜニクソンは破滅したのか、他人事ではない教訓を得られる映画でもある。

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ブッシュ  W.

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オリバー・ストーン監督のブッシュ前大統領の伝記映画。原題「W.」は、ブッシュ氏のミドルネーム、「ウォーカー(Walker)」のイニシャル。たぶん、アメリカ人の多くは、この一文字で誰を指しているか分かるから、こういうタイトルになったのだろう。

オバマ大統領の強烈なカリスマ性と人気に、今やブッシュ氏の存在は完全にかすんでしまった観がある。しかし、人気は時とともに移り変わる。オバマ氏のこれまでの最高の支持率は就任直後の68%だったが、ブッシュ氏は同時多発テロ直後に90%という驚異的な支持率を叩き出した。当時のブッシュ人気は、今のオバマ人気と比較にならないものだった。

本作は、ブッシュ氏の同時多発テロ直後からイラク介入に至るまでの様子を、青年時代の破天荒でヘタレの生き様もところどころ交えながら、心理描写も巧みに描いている。よく知られていることではあるが、ブッシュ氏は、もともと名門に生まれた「ぼんぼん」であり、勉強も仕事もあまりできない、性格的にも欠点の多い人である。しかし、この人には、どこか人を惹き付けてやまない人間的な魅力がある。本作は、そんな等身大のブッシュ氏を、風刺と愛情をもって描いている。

個人的に一番印象に残ったシーンは、酒浸りの生活を送っていたときに、神様に出会って回心する場面。信仰はブッシュ氏の人格の中核を成しているだけに、しっかり描かれている。ブッシュ氏の信仰は、本作ではやや風刺的なコメディ・タッチで描かれているが、それは彼のイラク政策が失敗に終わったからで、結果論だろう。実際には、ブッシュ氏はもっと真剣な態度で祈り、かつ真剣な態度で政策決定に臨んでいたのではないかと思う。

ブッシュ氏を演じたジョシュ・ブローリンの演技が凄い。もともと顔はあまり似ていると思えないが、喋り方や挙動、ちょっとした仕草が、笑えるほどそっくり。これは役者魂と努力の賜物なのだろう。繰り返してしまうが、勉強も仕事もできず、欠点も多いブッシュ氏を、これでもかとばかりリアルに演じている。食事中に口に物が入ったまま、要領の得ない発言を一所懸命繰り返す様などは、まさにブッシュ氏が目の前にいる感じ。こういう飾らない天然さに、人は惹き付けられるのかもしれない。

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マーシャル・ロー  The Siege

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ここ数年、中東とアメリカの関係を扱った優れた作品がいくつか世に出ている。具体的には、「シリアナ」、「キングダム-見えざる敵‐」など。この作品も、同じテーマを扱っている。ちなみに、原題は「包囲攻撃」の意、邦題は「戒厳令」の意。それぞれ、本作の趣旨を正確に反映している感じ。

最初に、今いちと思った点を書くと、典型的なハリウッド商業主義の娯楽作品の映画で、底が浅い。リサーチも甘いし、ディテールにこだわりがないので、リアリティが薄い。役者がデンゼル・ワシントン、アネット・ベニングなどを起用しながら、この底の浅さは制作サイドの問題か・・・。ちょっとがっかり。

しかし、1998年製作の映画で、2001年の同時多発テロを、ここまで正確に予期した点は驚愕。現実は、映画をはるかにしのぐスケールで起きたが、ここまで正確に予期した点は脱帽。いま、ブッシュ政権下でのテロ容疑者への尋問や拷問の方法が問題になっているが、そういう要素も描いており、正確に未来を先取りしている。

しかし、ブルース・ウィリスという役者は、分野を問わず、完全に娯楽作品向けの役者だということを改めて確認した。つまり、この人が登場すると、どんなに集中して見ていても、これが映画なのだという現実に一気に引き戻される。ただ、ダイ・ハード・シリーズなどでの活躍は評価に値するところで、それはそれで、この人の持ち味なのだろうという気がした。

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サルバドル-遥かなる日々-  Salvador

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すごく昔に見て、印象に残った個性の強い作品。今回、DVDで見て、改めて良い作品だという思いを新たにした。途上国、紛争国の真実の一面を描いているという意味では、このブログでも少し前に取り上げた「ミッシング」と相通じるものがある。

1980年代のエルサルバドルの実情を、ジャーナリストの視点から描いている。凄惨な事件がいくつか取り上げられているが、これらは全て実際に起きた事件。現在、アメリカはイラクとアフガニスタンに足をとられて右往左往しているが、当時のエルサルバドルは、アメリカにとってちょうどそんな頭痛の種だった。

映画には、実情を大袈裟に描いた娯楽作品と、実情が悲惨すぎて、そのまま伝えられない作品がある。本作は後者の典型。現実は、こんなものではなかったことが史実から分かる。

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ミッシング  Missing

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1973年、チャールズ・ホーマンというアメリカ人の若手ジャーナリストが、南米チリでの滞在を妻や友人とともに楽しんでいた。そこを、突然の軍事クーデターが襲う。チャールズは失踪し、家族と米国政府による慎重な捜索が始まった。結果は、誰もの想像を超えるものだった…。

本作はそんな本当に起きた話を映画化した作品。非常にショックな内容。観た後、背筋の凍るようなイヤ~な感覚がしばらく残る。全身から力が抜けていくような虚しさが残る。しかし同時に観てよかったとも思う。非常に見応えのある完成度の高い作品だ。

自分はバブル時代に学生時代をすごし、当時はいろんな途上国にも遊びに行った。そして、その後も仕事で途上国へ行くこともあり、それなりに危ないこともあった。しかし、今となっては楽しい思い出ばかりであり、今の若い人の中にも、好んで途上国や紛争国へ行く人がいるが、そういう人たちの気持ちもよく分かる。

しかし、ああいうところに行くには、一定のリスクが伴う。近年でも、イラクやアフガニスタンで、バックパッカーやNGO職員の若者が犠牲になったが、ああいうことは決して特別なことではない。ああいうことは、絶対に起きてはいけないことだが、途上国や途上国では、残念ながらいつでも起きる可能性があることでもある。

この映画は、そういう途上国、紛争国の一面を、静かな恐怖とともに伝えている。特に、最後の方で米国大使館の駐在武官が、チャールズの父に語る例えはとても教訓に満ちている(どういう内容かは、ぜい映画を観てください)。― 途上国、紛争国へ行くな、ということではない。しかし、そういう場所がどういうところかを、事前に了承した上で行く必要があるということだろう。

父親を演じるジャック・レモンが涙を誘う。主人公の妻役のシシー・スペイセックも切ない。ヴァンゲリスの音楽も、とてつもなく悲しい。 ― 悲しく、恐ろしく、そして重い映画である。そして、隠れた名作だと思う(※全く同名の映画がありますが、こちらはジャック・レモン出演、コスタ・ガブラス監督の作品です)。

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