投稿者「ひつじ」のアーカイブ

トレーニング・デイ  Training Day

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麻薬捜査課に配属された新人ジェイク(イーサン・ホーク)は、着任初日、ベテラン捜査官アロンゾ(デンゼル・ワシントン)に付いて、ロサンゼルスのダウンタウンの現場を回った。そこでは、想像を絶する実地訓練ともいえる「トレーニング」が待っていた。

現実は、映画やテレビで見るのと違う。世の中は複雑だ。理屈どおりには行かない。だから、本作で描かれているようなこともあるように思えてくる。たしかに誇張もあるし、極端なケースを取り扱っているが、ある意味で世の中の本質を描いている。

デンゼル・ワシントンは善人を演じることが多いが、ここでは悪玉を実に上手く演じている。ロケは、本物のギャングの支配下にある地域で行ったそうだ。たしかに、静かな不気味さが漂っている。真の「トレーニング」を受ける場として、文句なしか・・・。

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タイタンズを忘れない  Remember the Titans

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アメリカで、人種問題が法的・形式的に解決されたのは1960年代のことで、そんなに昔のことではない。ましてや実質的な意味では、アメリカで人種問題は未だ現在進行形の問題として捉えられており、オバマのような人が大統領になった今でも、すでに解決したなどと思っている人はおそらくいないだろう。

本作は、1970年代初頭に、人種間の融和を目指して、地域の教育政策の一環として、半ば強制的に白人と黒人の人種混合のアメリカン・フットボール・チームを創設し、そこに白人の監督を差し置く形で、黒人の監督を着任させたという実話に基づく作品である。チームが人種間の融和を目指す中で、小さな融和と対立を繰り返しながら、緩やかに大きな融和のうねりへと向かっていく様子が、丁寧に描かれている。

日本人の多くにとって、アメリカで白人と黒人が一緒にやっていくことがどれだけ大変なことか、あまりピンと来ないかもしれない。しかし、日本でも、在日の人や外国人に対する偏狭な考え方が、社会の一部に見られるように、こういう民族や人種の問題を克服するのは、時として困難なこともある。

ましてや、白人と黒人というのは、まず外見がはっきり違うし、歴史上のルーツとしても奴隷制度という大きな汚点がある。そういういことを考え合わせると、彼らが一緒にやっていくのは、想像以上に大変なことだということがよく分かる。本作は、その辺の大変さを丁寧に、正直に描きこんでいる。

誰でも、自分と大きく違う人を受け入れ、一緒にやっていくのは難しい。しかし、自分と違う人を認め、受け入れることは、自分が他者に受け入れてもらい、社会の中で孤立せず融和して生きていく上でも不可欠だ。

人種問題というのは、外見の違いが目に見えるから、ある意味分かりやすいが、自分と違う人を受け入れることは、人種の同異を問わず大事なことだと改めて感じました。

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ディア・ハンター  The Deer Hunter

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ディア・ハンター、鹿の狩人、である。要所要所で鹿狩りのシーンが出てくる。しかし、この映画はとてもメッセージを汲み取りにくい映画である。

有名な映画なので荒筋は省くが、この鹿狩りでの「One shot, One kill」という言葉が、後に出てくるベトナムでのロシアン・ルーレットのシーンと絡んでいるのは分かる。しかし、これは何を意味するのだろうか。

紅一点のメリル・ストリープが美しく可憐。クリストファー・ウォーケンの鬼気迫る演技も秀逸。ジョン・サベージも入院中のときの心身ともに憔悴しきった演技がリアル。ロバート・デニーロ、言うことなし。故ジョン・カザール、ピストルをもてあそんでいてデニーロに怒られてヘコむシーンが○。

あとアクセルという名前で出てくる巨漢の男は、製鉄所で実際に働いていた男性を、撮影現場で話していて気が合ったというだけでリクルートして、出演させてしまったらしい。つまり、素人。しかし信じられないほど、これらの超名優たちに溶け込んでいて、違和感が全くないのはスゴイ。

ベトナム戦争映画として、北ベトナム軍をいたずらに残虐に描いている、米軍の残虐性を描いていないという批判が多い。確かにその通り。北ベトナム軍やサイゴンのその筋の者が、あんなロシアン・ルーレットをやっていたという確証はなく、ただの脚色だという話も聞く。そういう意味では、真面目に見る人にとっては、ミスリーディングなところはある。

しかし、それはさて置いても、マイケル・チミノ監督は、この映画で何を語りたかったのか。いろいろ資料を見ても分からない。ただし、一回見ると、脳裏に焼き付いて忘れられない映画であることは確か。音楽も、しばらく頭の中で鳴り続ける。

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ワルキューレ  Valkyrie

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一般のイメージと違って、ナチス政権下のドイツ軍は決して一枚岩ではなかった。ヒトラーに絶対忠誠を誓う親衛隊(SS)のような組織もあれば、連邦軍の中には、ヒトラー個人というより、ドイツという国家に忠誠を誓うまともな軍人も大勢いた。それだけにヒトラーの暴走を止めるため、少なくとも43回の暗殺未遂事件が起きたという。この「ワルキューレ作戦」の決行は、その中で最もインパクトのあった事件だったようだ。

もともとワルキューレ作戦というのは、非常事態時に予備役部隊に総動員をかけるための作戦だった。そして、これを当時のドイツ軍・予備役部隊の運用責任者だったクラウス・フォン・シュタンフェンベルグ大佐が、ヒトラーの暗殺とナチス政権の転覆のために利用した。計画は、ヒトラーの暗殺失敗という最初の段階からつまづき、クーデターも途中で頓挫、結果的にシュタンフェンベルグ大佐ほか、多くの将官が反逆罪で処刑された。

組織社会に矛盾はつきものだ。完璧な人間はいないから、自分も、上司も、部下も、同僚も、多くのミスを犯す。そして、責任のなすりつけ合いのようなこともあるかもしれない。しかし、組織の上層部が、率先して犯罪行為に走ったり、公益を踏みにじるような行動に走ることは稀だろう。当時の良識あるドイツ軍将校の悩みが、いかに深かったかを測り知ることは難しい…。

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シャドー・メイカーズ   Fat Man and Little Boy

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現代の核爆弾とは、原子爆弾のことをいう。水素爆弾や中性子爆弾は、今では対費用効果の観点からほとんど実戦配備されていない。そして原爆には、プルトニウムを利用したタイプと、濃縮ウランを利用したタイプの2種類がある。製造方法と爆発機序が根本的に違う。この点は、1940年代から今に至るまで基本的に変わっていない。

原題のFat Man and Little Boyのうち、ファットマンとは長崎に投下されたプルトニウム型原爆を指す当時のあだ名で、リトルボーイとは広島に投下された濃縮ウラン型原爆を指すあだ名だった。両方とも爆弾の外見から、こんな滑稽なあだ名で呼ばれた。そして、この滑稽な名前の2つの爆弾は、今から64年前、一瞬にして数十万名の生命を地上から消し去った・・・。

本作は、この2つの原爆を開発したマンハッタン計画を率いた二人の米国人を主人公としている。一人は、政治的・軍事的リーダーシップをふるったレズリー・グローブズ陸軍准将(ポール・ニューマン)、もう一人は技術的リーダーシップをとったロバート・オッペンハイマーである。本作を観ると、この二人のいずれが欠けても、米国の原爆開発が「成功」しなかったことがよく分かる。

当時はナチスドイツも同様の計画を進めており、ドイツがこの技術を西欧地域に対して使用したり、もしくはソ連に技術が漏れる懸念もあったようだ。そういう意味で、二人は異常なプレッシャーの下で仕事をしていたのだが、それを上回るほどの異常な集中力で、二人は短期間のうちに計画を「成功」に導いた。本作は、その緊張感溢れるプロセスを、関係者の人間模様も交え、丁寧に描いている。

歴史にifはない。しかし、もし米国が原爆の開発に先行しなかったら、ナチスドイツが欧州で、さらには世界で覇権を握っていた可能性は否定できない。さらに、もしソ連が先行していたら、日本も共産圏に組み込まれ、結果的に北朝鮮のような国家体制になっていた可能性も否定できない。

だからといって、どこかの政治家のように米国が日本に原爆を投下したことを肯定するつもりはない。しかし、当時の原爆の開発状況は、極めて切迫した時間的問題であり、米国がマンハッタン計画で原爆を開発しなくても、どこかの他の国が開発に成功していたことだけは、間違いのない事実のようだ。

そういう意味で、ともに強烈な独裁国家だったドイツやソ連ではなく、民主主義と資本主義(自由市場主義)を標榜する米国が原爆の開発に先行し、結果的に戦後世界の覇権を握ったことは、世界にとってそれほど不幸なことだったかどうかは熟考する必要があるだろう。また、当時の日本が、当時のドイツやソ連とタメを張るほどの超独裁国家だったことも考慮しなければならない。

また、8月6日、8月9日がめぐってくる。こういう問題を改めて考える良い機会かもしれない。

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