月別アーカイブ: 2009年4月

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン  Catch Me If You Can

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こういうサスペンスとコメディの掛け合わせは、なかなか味の調合が難しいが、スピルバーグの手にかかればこの通り。

この映画で目立つのは、役者の巧さと、独特のストーリーのモチーフ。役者の巧さで言えば、ディカプリオの演技が傑出している。ディパーテッドでもそうだったが、どうも外見の良さで覆い隠されがちだが、彼は明らかに演技派だ。また、エイミー・アダムズのおバカなアメリカの田舎娘の演技も光る。この人は、チャーリー・ウィルソンズ・ウォーでの演技も素晴らしかった。

ストーリーのモチーフとしては、家庭の不幸が子どもの人格を歪めるということが一つのテーマになっている。誰も自分の人生の不幸を、親や生まれのせいにはできないが、やはり家庭環境は相当程度、人格形成に影響する。この映画は、そうした病理を、嫌味なく上手に描いている。

地味だが、いい映画です。それにしても、この邦題、何とかならなかったのでしょうか?

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グッド・シェパード   The Good Shepherd

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CIAの創設経緯、初期の活動を、なかば事実に基づいて描いた作品。主人公ウィルソンは、実在のCIA幹部をモデルにしているという。CIAが実際に行った秘密工作なども描かれている。

グッド・シェパードとは、もともと聖書の言葉で「良き牧者」の意味。聖書では、方向感覚のない羊を人間にたとえ、神としてのイエス・キリストを羊を導く牧者にたとえる表現がたくさん出てくる。

本作では、CIAが自身を「グッド・シェパード」として捉えていたことを描いているのだが、これはかなり倒錯した捉え方。なぜなら、本当の「良き牧者」は、聖書にあるとおり、人を救うために自ら命を捨てるが、CIAは人の命を奪うから。CIAは、敵性国家の国民のみならず、自国民の生命さえも奪ってきた。

本作を観ていると、CIAの中に、そういう勘違いや高慢、倒錯した価値観が、創設当時から深く浸透していたことが良く分かる。関係者がすべて、神ではなく、秘密結社の信条を信奉していること、主人公の家庭が完全に崩壊していることなどに、そういう歪んだ価値観の表出が見て取れる。

遠い外国で、自国を陥れる陰謀が画策されていれば、そういう画策を潰そうとする誘惑に駆られるのは当然だ。とくに、それだけの力が実際にあれば、なおさらのことだ。しかし、そんな動機で行われた破壊工作が、他国との対立を先鋭化し、自国民を危険に陥れてきた。それがCIAの歴史ともいえる。

最近、対テロ戦争の背後で行われていたテロ容疑者への過酷な尋問について、CIAなどの関係者が議会証言を行った。そこで興味深かったのは、そういう過酷な尋問は、米国の国益を増進するよりも、結果的に国益を毀損したと、CIA関係者自身が語っていた点。やはり、そうなのかという気がした。

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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー   Charlie Wilson’s War

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1980年代のアフガン紛争に対するアメリカの介入を描いた作品。1980年代、ソ連は、アフガン内戦に介入して傀儡政権を樹立した。米ソ冷戦の下、この動きに対抗して米国は反政府のイスラム過激派(ムジャヒディン)を支援して、親ソ連派政府を打倒、ソ連のアフガン撤退を促し、ソ連崩壊の遠因を作った。本作は、この米国のアフガン介入のプロセスを描いている。

ちょっと調べたら、ウィルソン議員だけでなく、テキサスの女性フィクサー、CIAのケース・オフィサーも、そのまま本名で作品化されていることを知った。フィリップ・セイモア・ホフマン演じるCIAスタッフ以外、まだ存命なので、さぞ居心地が悪いだろうという気がするが、余計なお世話か。

議会やCIA、米政界関係者の日常を描くなかで、彼らの持つ独特の高慢と狂気を、その言動・行動の中にうっすらと浮かび上がらせている。日常のおしゃべりの中で、数億円の拠出や、数万人の人命の帰趨がポンポンと決まっていくのだが、こういう様子をコメディ・タッチで描きながら、彼らの行動がどこか異様で歪んでいることが、観ている側に伝わってくる。

終盤では、アメリカが支援したムジャヘディンが、20年後にアルカイダの一部となってアメリカに刃を向き、2001年のテロを引き起こしたことを、禅問答のたとえで示している。いまアメリカは、この支援のつけを、延々と払わされ、苦しみ抜いている。なんとも皮肉な話である。

映画としても、なかなかよく出来ている。人物描写が丁寧で、単純な描き方に終わっていない。誰もが持つ人格の多面性や矛盾を、さりげなく描いている。爽やかなアメリカの民主主義の背後に潜む狂気を、正面から批判することなく、変化球でさりげなく描いている点も秀逸。

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アメリカン・ギャングスター   American Gangster

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1970年代に実在した伝説のギャング、フランク・ルーカスをデンゼル・ワシントンが演じる犯罪サスペンス。ルーカルを追う刑事をラッセル・クロウが演じる。監督はリドリー・スコット。この陣容で外れることはあり得ない。

警察組織の腐敗、人種対立、ドラッグの浸透など、アメリカ社会の病巣を正直に描いている。舞台となったマンハッタンのハーレム地区は、当時は部外者が入れないほどの犯罪多発地区だったが、いまでは開発も進み、クリントン元大統領が事務所を構えるなど、様相が一変した。

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300

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さんびゃく、じゃありません。スリー・ハンドレッドです。紀元前480年、レオニダス率いるスパルタの精鋭300名が、アケメネス朝ペルシアの数万の大軍に体当たり勝負した「テルモピュライの戦い」を描いた作品。

当時のペルシアがいかにすごかったかというのは、中東のほぼ全域から南ロシア、インド西部までを版図に治めていたことからも分かる。本作でも、そのクセルクセス王を、化け物のように恐ろしげに描いていることから、その強大さが伝わってくる。また、当時のスパルタの強烈なカルチャーを、分かりやすくデフォルメして描いている点も、本作の特徴。

思えば、ペルシアとはイランである。日本人一般にとって、イランは中東の一国かもしれないが、欧米社会にとっては未だ脅威の国。とくに米国にとっては、イランで核ミサイルが稼動すれば、同盟国のNATO諸国や、イスラエルが射程に入るため、北朝鮮などよりもはるかに重要度の高い外交案件となっている。欧米人にとって、「テルモピュライの戦い」は、いまだ続く因縁の闘いなのかもしれない。

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