投稿者「ひつじ」のアーカイブ

インビクタス Invictus

インビクタス / 負けざる者たち [DVD]
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心揺さぶられる映画である。南アフリカの人種対立の歴史を背景に、アパルトヘイト廃止直後、またネルソン・マンデラの大統領就任直後に、南アのラグビーチームが、ワールドカップのチャンピオンを目指す過程を描いている。

マンデラは大統領就任後、黒人の権利回復と同時に、人種間の融和と和解を、深い思慮と英断で、二つ同時に実現した。この二つは、現実的に考えれば、両立することは不可能だが、マンデラは経験と思慮と勇気によって、同時に達成した。その中に、ラグビーのワールドカップがあったわけだが、そこには旧南アの象徴とも言える金と緑のカラーリングのナショナルチームのユニフォームを変更しないなど、細かい問題をおざなりにしない、深い思慮があった。

モーガン・フリーマン演じるマンデラが、自らをかつて破滅させようとした敵を許すことの難しさと大切さを、説得力をもって語りかけている。

マラソン・マン  Marathon Man

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ニューヨークのセントラルパークの周りを毎日マラソンしている大学院生ベイブ(ダスティン・ホフマン)。そこに、ナチス残党のゼル(ローレンス・オリビエ)の魔の手が迫る。

ベイブとゼルの間には、一見なんの接点もないのだが、ベイブの兄ドク(ロイ・シャイダー)がある闇の仕事に関与していたため、ゼルに執拗に追われることになり、ついに…。

有名な歯医者のシーンが、とにかく怖い(痛い)。”Is it safe?”と、繰り返し聞きながら、ゼルはベイブの歯に歯科用電動ドリルを突き立てる。映画史上に残る怖い、痛いシーンだと思う。

ホラー的な見た目の怖さではなく、心理的な恐怖を煽る正統派で王道のサスペンス。ロイ・シャイダー、ウィリアム・ディベイン、マルト・ケラーといった名優が脇を固める味わい深い秀作。

イングロリアス・バスターズ  Inglourious Basters

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第二次世界大戦時のドイツ占領下のフランス、イングロリアス・バスターズというレイン中尉(ブラッド・ピット)率いる米軍特殊部隊が、ドイツ将校を次々と抹殺していた。そこへナチス親衛隊SSのランダ親衛隊大佐が現れ…。

本作で光っているのは、やはりランダ親衛隊大佐を演じるクリストフ・ヴァルツ。数カ国を操りながら、その語学力でもって、巧みに尋問相手の嘘を暴いて追い詰める。

ヴァルツは、アカデミー賞を受賞したほか、カンヌ、ゴールデングローブも総なめにした。アカデミー賞の授賞式では、タランティーノにしきりに感謝していた。

しかし、タランティーノというのは、バイオレンス・シーンを撮らせたらピカイチというのが、本作を見てもわかる。バイオレンス自体は、痛そうだし、苦手だが、その描き方がスーパードライで秀逸。

善き人のためのソナタ   Das Leben der Anderen

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非常に考えさせられるところの多い映画である。人間は環境次第で、いかに俗悪に成り下がるかという、誰もが持つ人間の恐ろしい側面を描いている。

ストーリーは、冷戦下の東ドイツにおいて、当時の国家保安警察(シュタージ)が、演劇の演出家と女優のカップルを、やや反体制的であるという理由で、全生活を監視・盗聴するというもの。監視対象の人間の精神構造を崩壊させることによって、体制批判を封じるというシュタージの思考回路に背筋が凍る。

本作の主役は、その盗聴工作を行うシュタージの担当官ヴィスラー大尉。冷酷な秘密警察のサイボーグといった感じのヴィスラーだが、芸術家カップルの盗聴を行うにつれ、ヴィスラーの心に変化が起き、人間そのものを押し潰す社会主義的な独裁体制に疑問を持つようになっていき…。

当時の東ドイツでは、全国民の10%が何らかの形でシュタージに協力していた(協力せざるを得ないように脅されていた)というから、すさまじい監視体制だ。ベルリンの壁崩壊後、シュタージの全貌が暴露され、自分の夫や妻、親や子、上司や部下がシュタージの協力者だったことが明らかになったことで、旧東ドイツ社会は大混乱に陥り、なかには精神を病んだ人もいたという。

ヴィスラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエは、本作公開の翌年2007年に亡くなった。彼は東ドイツ出身の俳優だから、監視対象の演出家のことを、おそらく我がことのように感じたことだろう。

3回結婚するような波乱の人生だったが、2回目に結婚したときの妻が、シュタージの協力者だったことが、後で公然の事実となったと言われている。しかし、ミューエは、離婚後はおろか、自身が亡くなるまで、そのことを否定し続けたという。

レスラー  The Wrestler

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30歳くらいまでは夢を見れる。しかし、30歳を超え、40歳を超え、となってくると、夢を追うよりも、現実に追いかけられるように人生が切り替わってきて、頭の切り替えが必要になってくる。

かつてプロレス界を一世風靡したレスラー、ラム(ミッキー・ローク)は、いまや肉体の故障に悩まされ、地位も名誉も金も、さらに家族まで失い、孤独で苦しい毎日を送っている。

スーパーの肉屋のパートで貧しい生活を支えながら、ときおり場末の試合に出場する。肉体と精神が悲鳴をあげるような苦しい生活の中、心の拠り所を求めて彷徨するラムが見つけた自分の存在価値とは…。

主人公ラムの姿が悲しく、切ない。これは、ラムを演じるミッキー・ロークの姿が、かつて一世風靡した当時と比べ、あまりに容貌が変わってしまっていることもあるかもしれない。

ラムの人生の一面が、自分と重なり、ミッキー・ロークとも重なる。マリサ・トメイの体当たり演技も素晴らしい。悲しく、切なく、心迫る名作です。

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