投稿者「ひつじ」のアーカイブ

ダークナイト  The Dark Knight

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ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21)
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大変な興行成績を収め、高い評価を得ている有名な作品。ヒース・レジャーの遺作でもある。そんな「名作」を今さらながら見た。

今まで本作を見なかったのは、これが私の苦手なSFアクションの分野に属する作品だったから。しかし実際に見てみて、自分の思い込みの愚かさに改めて気づいた。外見は確かに子どもっぽい「SFアクション」だが、その背後に人間の本質が描かれている大人の映画だ。圧倒的な興行成績と高い評価はウソではなかった…。

主題は、悪がはびこるゴッサム・シティの治安を、超法規的な立場から守るバットマンと、世界の破滅をもくろむジョーカーの対決。圧巻なのは、カネにも名誉にも目もくれず、人々と苦しみと世界の破滅そのものを自分の悦びとするジョーカー(ヒース・レジャー)の怪演。

世の中の犯罪者の多くは、自分の利得や快楽を獲得するために、結果的に人に危害を加えてしまうような共通点を持っているように思うが、ジョーカーは他人の不幸、破滅そのものを、自分の生き甲斐、享楽としている点で完全に異常。

しかし、よく考えれば誰でもこういう心の闇を持っている側面はある。他人の不幸を無意識のうちに悦んでしまったり、自分を傷つけた者に対して執念深い復讐心を燃え上がらせた経験が全くないという人は稀だろう。ジョーカーは、そんな人間の心の闇をあらわに示した一つの「ひな形」なのかもしれない。

そういう意味で、本作の主人公は、ダークナイト(暗黒の騎士)であるバッドマンではなく、ジョーカーなのかもしれない。バットマンは格好いいヒーローだが、ジョーカーは人間の本質の一部を正直に描いており、私たち普通の人間により近い存在だ。誰でも試練や誘惑によって、このように堕落する可能性があるという警告を発していると言ったら言い過ぎか…。

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あるいは裏切りという名の犬   36 Quai des Orfevres

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角川映画 (2010-10-20)
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原題は、パリ警視庁の所在地、オルフェーヴル河岸36番地のこと。

パリ警視庁のBRI(探索出動班)を率いるヴリンクス(ダニエル・オートゥイユ)は、その人徳とリーダーシップで次期警視庁長官の地位をほぼ手中に収めていた。一方、BRB(強盗鎮圧班)を率いるクラン(ジェラール・ドパルデュー)も、手荒い捜査手法でそれなりの実績を上げ、次期長官の地位を密かに狙っていた。そこに、現金輸送車の連続襲撃事件が立て続けに起こり、互いの捜査手法の違いが露になるなか、二人を取り巻く人間関係をめぐる摩擦もエスカレートして、対立が頂点に達し…。

いかにもフランス映画的な陰影とウェット感のある人物描写のなかで、ドライな質感の刑事物語が展開する。高速道路を疾走する現金輸送車が、一気に蜂の巣になる襲撃シーンも息を飲む。

ダニエル・オートゥイユとジェラール・ドパルデューの熱演も見所。とくに、「裏切り者という名の犬」を演じるドパルデューは、まさに犬畜生ともいえる最低の人間をさりげなく演じ切っていて憎々しい。それでも、ラストシーンが工夫されているので、観終わった後の気分は悪くない。

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インファナル・アフェア  Infernal Affairs  無間道

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ポニーキャニオン (2004-02-18)
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本作は、2006年のハリウッド映画『ディパーテッド』(マーティン・スコセッシ監督)のオリジナルとなった香港の作品。ディパーテッドを先に見てから、このインファナル・アフェアを見たら、ディパーテッドの切れ味のよいシーンのほとんどが、インファナル・アフェアのシーンを元にしていたことが分かり、ちょっとショック。多くの人が認める通り、それだけ本作が傑作だということになる。

潜入捜査官として香港マフィアに入り込むヤン(トニー・レオン)と、香港マフィアから警察組織に潜入するラウ(アンディ・ラウ)の対立と相克を描いているが、ディパーテッドよりも二人の苦悩がリアルに伝わってくる。医師を演じるケリー・チャンなど、女性との人間関係がディパーテッドとちょっと違うが、本作が作った骨格がそのままディパーテッドの良さに通じている点も改めて驚き。

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レバノン  Lebanon

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中東の小国レバノンでは、これまで幾度も戦争が繰り返されてきた。本作は、そのうちの1982年にレバノンにイスラエルが侵攻したときの戦争を扱った作品。イスラエルは、それまで何度も国内テロに脅かされてきたが、その主犯のパレスチナ人のグループが隣国のレバノン国内に潜伏していることを突き止め、容赦のない対テロ作戦をレバノンで展開した。

戦争映画のカナメは、そのリアリティにあると思うが、本作は監督自身がこの侵攻作戦に軍人として参加したことから、そもそもケチの付けようがない。一つの街を空爆で潰し、そのあとで戦車部隊が入り、残党を殲滅する凄惨な光景は、本当にこういうことがあったのだということを、観る者に納得させる力がある。

本作の特徴は、すべての映像がイスラエル軍の戦車の内部と、戦車のスコープから見た外界の様子だけに限られている点。それだけに、全編を通じて重苦しい空気が充満しているのだが、かえってそのことで観ている者も、あたかも中東の凄惨な戦場の中に閉じ込められているような気分になる。

情け容赦のない冷徹な部隊長、リーダーシップの欠けた戦車の司令官、生意気な砲弾係、葛藤に苦しむ繊細な射撃係など、登場人物の心理描写が細やかで丁寧なところも、作品としての厚みを加えることに貢献している。戦争は地獄だということが、言葉を超えて実感できる一作。

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チャイナ・シンドローム   The China Syndrome

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原発事故を扱った社会派ドラマ。題名は、原子炉が炉心溶融(メルトダウン)を起こしたら、放射性物質が地球の中心を突き抜けて、(米国から見て)地球の裏側の中国に達するというブラックユーモアに由来する。

本作は、今からちょうど32年前の1979年3月16日に全米で公開されたが、その12日後の28日に、いま盛んに報道されているスリーマイル島の原発事故が発生した。自分は今でも当時のことを鮮明に覚えているが、現在の日本の福島第一原発の状況は、それに匹敵する規模の事故だと報道されている。

映画作品として、非常に良くできている。原子力のことを詳しく調べて作っており、また原子力の推進派と反対派、そのどちらにも属さない人々の利害関係や確執も、分かりやすく描いている。また、この手の作品にありがちな大袈裟な描写がないところも、静かな迫力と恐怖感を醸し出している。

キャストも、ジャック・レモン(原発の技師)、ジェーン・フォンダ(テレビレポーター)、マイケル・ダグラス(カメラクルー)と磐石。ストーリー構成、カメラワーク、配役など、すべてをとっても、はっきり言って欠点のない作品。これを観ると、原発の恐ろしさも分かるが、私たちの日常生活が原発の上に成り立たっている現実もよく分かります。