投稿者「ひつじ」のアーカイブ

パシフィック  The Pacific

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スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクスらの共同監督による第二次世界大戦の太平洋戦線を、米軍の視点から描いた長編テレビドラマ。アメリカでは昨年放映されたが、日本では今夏初めてDVDとブルーレイが発売された。

最前線を戦った3名の海兵隊員の手記をもとに、ガタルカナル、ペリリュー、硫黄島、沖縄と続く太平洋戦線における転戦の様子が描かれる。手記を書いた3名も、そのまま実名で登場する。いたずらに米軍を美化したり、日本軍を軽視、蔑視することなく、米軍による残虐行為もしっかり描かれている点が、これまでの似たテーマの作品と一線を画す。

また、本作のもう一つの特徴は、戦争によって兵士一人ひとりの肉体も傷つくが、同時に心も傷つき、精神が崩壊していく様子も等価に描いている点。3名の海兵隊員のうち一人は、精神病棟への入退院を繰り返し、もう一人は、もともと特に高潔な心を保っていたが、様々な戦場体験により、心がケダモノのように変化していく。

戦争が、観念的な意味ではなく、本当に地獄だということが改めてよく分かる作品。そんなわけで、途中には心が落ち込むシーンも多い。しかし、最後まで見ると、なぜか心の中に清涼感が広がっていく。それは、監督のストーリー構成における手腕によるところもあるのだろう。

スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクスの共同監督による作品には、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を描いた「バンド・オブ・ブラザーズ」がある。こちらもリアリティ重視の長編作品。比べて観るのもおもしろいかもしれない。

ウォール・ストリート  Wall Street: Money Never Sleeps

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前作「ウォール街」は1987年の制作で、いわゆる株式大暴落のブラックマンデーの直前のバブル期に公開された。そういう意味で、前作はバブルの光と闇を単刀直入に描いていた。しかし本作は、リーマン・ショック後の2010年の制作で、金融市場の無情と、そこに横たわる人間心理の複雑な様相をストーリーの下地に織り込んでいる。

本作は前作のストーリーからお話を引き継いでいて、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が、インサイダー取引と証券詐欺罪で8年の懲役の後出所したところから始まる。

疎遠になっていた娘ウィニーとの関係修復にとりかかるゲッコーだったが、ウィニーは強欲な犯罪者の父親を毛嫌いしていた。そんな中、ゲッコーはウィニーの婚約者でウォール街で一旗揚げようとしている野心家の青年ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と出会う。娘との和解、ジェイコブとの親交と通して、自分の仕事とプライベートがジェイコブとウィニーによって影響されることに若干の心理的抵抗を覚えたゲッコーだったが…。

子どもというのは、泣き所だ。自分がどれほど堅固な価値観を持っていても、子どもの運命が翻弄されたら、自分も翻弄されずにはいられない。ゲッコーも、無敵の価値観で金融市場で勝ち続けてきたが、子どもの問題となると、どうもペースが狂ってしまう。

前作では、市場経済の世界で無感情に利益を摘み取る金融サイボーグのようなゲッコーだが、本作では血の通った人間であることが、赤裸々に描かれている。この点が、前作と一線を画すポイントでもある。金融サイボーグのゲッコーの人間的側面が垣間見える骨太の良作といえるだろう。

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ソーシャル・ネットワーク  Social Network

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フェイスブック創業の経緯を、創業者で現CEOのマーク・ザッカーバーグを中心に描いている。ザッカーバーグ氏は、周囲の知恵や力を借りて、ときには友人までも利用して、いろんな無理をしながらフェイスブックを創業したと批判されることが多い。変わり者だ、人間として欠落していると言う人もいる。

そして、この映画作品でも、そういう彼の裏の側面が描かれている。しかし、それでもやはり本作を見て、フェイスブックはザッカーバーグ氏によって創業され、ザッカーバーグ氏によって、ここまで成長できたのだという印象がますます強くなった。

その理由は、まず彼が一人のコンピューター・エンジニアとして、周囲よりも遥かに技術的に卓越していたという点が挙げられる。ハーバード大学内の女子学生を美人コンテスト風に、学内の投票でランキングするというアイディアは、他の学生も少し思いついていたようだ。しかし、実際にそのアイディアをプログラムに組み、ネット上にアップロードしたのはザッカーバーグ氏だった。

また、このシステムを学外へ広げ、現在のフェイスブックに近いビジネスモデルにしようと考えたのは、おもに他の学生たちだった。しかし、実際にプログラムを拡張・変更し、外部一般から莫大なトラフィック(アクセス)を集めるだけのサイトを作り上げたのもザッカーバーグ氏だった。

また、ビジネス面においても、広告収入に頼って、短期的な利益を上げる安易なアイディアを退け、サイトのクオリティーを上げることで、巨額の支援資金を引き寄せるという現在の圧倒的な成功に至る路線を主張し、その難しい路線を軌道に乗せたのもザッカーバーグ氏だった。

巨額の資金を方々から集め、著名な資金協力者からの猛烈なプレッシャーにもめげず、様々な誘惑にも打ち勝ち、ひたすらサイトのクオリティーを上げることで、参加者と資金を増やすという、当たり前だが一番難しく、ストレスが溜まる地味な仕事にコツコツと取り組んだのもザッカーバーグ氏だった。

周りにいた友人や「協力者」たちは、彼を支援しているようで、実際には彼を妬んだり、足を引っ張っているだけで、建設的なことはほとんど何もしなかったように見える。― ザッカーバーグ氏は、たしかに毀誉褒貶の多い人物のようだが、フェイスブックという巨大事業が、やはり彼の功績によって誕生し、成長し続けているという事実が、この映画を見ると浮き彫りになってくる。

たぶん、彼と同じくらいの技術的な才能を持った人は、世の中に大勢いるだろう。また、彼と同じくらいビジネス感覚に優れた人も大勢いるだろう。彼と同じくらいプレッシャーに強い人もいるだろう。また、彼と同じくらいこの世の誘惑に抵抗できる人もいるだろう。しかし、これらすべての素養を兼ね備えた人は、彼しかいなかった。そういうことが、この映画を見るとよく分かります。

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しあわせの隠れ場所  The Blind Side

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2009年に、NFLのアメフト・チームにドラフトで指名入団したマイケル・オアーのエピソードを描いた実話に基づく作品。

夫はレストラン・チェーンのオーナー、自らもインテリア・デザイナーとして成功を収めるリー・アン(サンドラ・ブロック)は、ある晩、雨に濡れながら一人で夜道を歩くマイケル・オアー(クィントン・アーロン)を、車中から目にする。彼を放っておけなかったリー・アンは自宅に連れ帰り、マイケルの複雑な境遇を知ることとなる。一家は、マイケルの境遇と人柄を知るにつれ、彼をかけがいのない存在だと感じるようになり、マイケルを一家に迎え入れる決断を下す。マイケルは、新しい環境にも徐々に慣れ、高校でフットボールの才能を徐々に開花させていき…。

本作は実話に基づく作品ではあるが、映画としてストーリー構成や登場人物を巧みに使い、人間にとって最も大切なものは、生まれ育ちではなく、ましてやカネではなく、さらに頭の良さや運動神経でもなく、心の美しさだというメッセージを伝えようとしているようだ。ただし、キレイ事ではなく、単なる美談の次元を超えて、人を助けることの難しさについても、マイケルの過酷な境遇や、強者が弱者を助けるときに陥りがちな傲慢の危険性を通してリアルに描いている。

原作の「ブラインド・サイド」(死角、盲点)とは、アメフトの攻撃のかなめとなるクォーターバックの利き手と逆側の死角エリアを指す。通常、このエリアはオフェンシブ・タックルの担当となる。クォーターバックは、パスプレイの際に体を効き手側に開くため死角になりやすく、このブラインドサイドを守るオフェンシブ・タックルには、特に高い身体能力が求められるとされている。

言うまでもなく、マイケル・オアーは、このブラインドサイドを担当するオフェンシブ・タックルの選手。また、マイケルはリー・アン一家に助けてもらって幸せな人生を切り拓くことができたわけだが、リー・アン一家もマイケルを助けて、思わぬ「死角」に幸せがあったことに気付かされたわけだから、「しあわせの隠れ場所」という邦題は、なかなか考え抜かれたタイトルです…。

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アンストッパブル  Unstoppable

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2001年にオハイオ州で実際に起きた貨物列車の暴走事故をもとにした作品。映画の中では、ペンシルベニア州の森林地帯や鉄鋼業の街中を、毒性の強い化学物質を満載した数十両の無人貨物列車が疾走する。事態を放置すると、人口密集地帯に列車が突っ込んで大惨事なることが確実な中、同じ線路を走っていた別の機関車が解決策を考えついて…。

事故を収拾しようと試みるベテラン機関士フランクを演じるデンゼル・ワシントンと、新人車掌ウィルを演じるクリス・パインが好演。二人は家族からも見離されたダメ親父、ダメ夫を演じているのだが、体を張って事態を収拾しようとする姿に、二人の家族の彼らに対する態度も変わっていく。

一種のパニック物ではあるが、鉄道が舞台なので、作品が醸し出す雰囲気は地味。しかし、かえってそんな設定によって、地に足がついた骨太の作品に仕上がっている側面もある。地方のアメリカの庶民の暮らしぶりや価値観なども随所に描かれており、派手さはないが真面目で実直なテイストのある作品。

そうは言っても、これまで無数のアクションやサスペンスを手がけたトニー・スコット監督の作品だけあって、最後まで目が離せないスリル満点のストーリー展開にもなっている。見て損なし。

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