ドライヴ Drive

<あらすじ>
天才的なドライビング・テクニックを持つ寡黙な“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)は、昼は映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手というふたつの顔を持っていた。
家族も友人もいない孤独なドライバーは、ある晩、同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と偶然エレベーターで乗り合わせ、一目で恋に落ちる。
不器用ながらも次第に距離を縮めていくふたりだったが、ある日、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が服役を終え戻ってくる。その後、…
(Movie Walker解説より)

観終わったあと、久々に頭をガツンとやられた感覚…。監督がニコラス・ウィンディング・レフンというデンマーク出身の人で、ハリウッドの世界に浸かっていなかったせいか、ロサンゼルスを舞台にしたアメリカ映画なのだが、ドライで無機質、それでいてどこか引き締まった硬質なおしゃれ感が全編に漂っている。

主人公”ドライバー”も、どこか無機質で寂しげなのだが、前半の寡黙なヤサ男ぶりから、後半への変貌は圧巻。羊の皮をかぶった狼なのだが、その狼の皮をさらに脱ぐと、、、と次から次へ違う顔を見せていく。

舞台がロサンゼルスの裏社会であり、登場人物のほとんどが、米国のヤクザなのだが、それをアルバート・ブルックス、ブライアン・クランストン、ロン・パールマンなどクセの強いベテラン勢が固めている。まわりのチンピラ役の俳優陣も紋切り型でなく、しっかりキャラが作りこまれていて、実にイヤーな感じのする不気味さを醸し出していて上手い。

アクション、そしてバイオレンス(かなりきついです)もあるのだが、普通のハリウッド映画と全然タッチが違う。ユーモアのセンスも挟まず、セリフや風景で、筋書きを補足説明することもしない。

そのため、次の展開が読めない、登場人物の本当の顔が見えないなど、頭を使わされるのだが、展開が速いので面倒くさい感じにならない。観客を突き放し、適度な距離感をあけたまま、ストーリーは怒涛の終盤へ一気になだれ込む。

バイオレントだけども、奥深く、良い意味で複雑で、不思議な味わいのある映画です。

 

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ウルフ・オブ・ウォールストリート  The Wolf of Wall Street

<あらすじ>レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督が5度目のタッグを組み、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートのセンセーショナルな半生を描いた。22歳でウォール街の投資銀行へ飛び込んだジョーダンは、学歴もコネも経験もなかったが、誰も思いつかない斬新な発想と巧みな話術で瞬く間になりあがっていく。
26歳で証券会社を設立し、年収4900万ドルを稼ぐようになったジョーダンは、常識外れな金遣いの粗さで世間を驚かせる。全てを手に入れ「ウォール街のウルフ」と呼ばれるようになったジョーダンだったが、その行く末には想像を絶する破滅が待ち受けていた。(映画.comより)

主人公のディカプリオ演じるベルフォート氏は、仕事の上では天才的な切れ者で、人間関係もすごく器用な人物に描かれている。だからこそ、自身も大きな成功を収め、どんどん人も付いてきて、会社も大きくなった。でも同時に、多くの客をいいように言いくるめ、ときに騙し、ズルズルと証券取引上の犯罪にも手を染め、私生活でもメチャクチャな放蕩に走った。

こういう人を批判するのは簡単だ。しかし、世の中の多く人が、ここまで仕事の才能に恵まれていないし、ここまで好き放題できるほど稼ぐことができない。そういう意味で、誰もが、もしここまで有能で、器用だったら、いろんな誘惑にどんどん負けて、破滅に向かって堕ちて行く可能性もあるかもしれない。

「ウォール街」とか、シリアスな金融物ではなく、狂気に満ちたハチャメチャなコメディ。そこがいかにもスコセッシらしく、彼の個性が色濃く出た作品とも言える。ディカプリオも、イケメン俳優であると同時に、怪優、性格俳優という感じが板に付いて久しいが、クレイジーな怪演、名演を存分に見せてくれる。また一つ、ディカプリオとスコセッシのコンビが好きな人にとって、手放せない一作が仕上がった観がある。

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マージン・コール  Margin Call

<あらすじ>2008年のリーマン・ショックを題材に、ニューヨークの巨大投資銀行が、瞬く間に崩壊するまでの24時間を描いた社会派サスペンス・ドラマ。

投資銀行のリスク部門担当者が、前日に解雇された上司から警告を受けて自社の資産状況を調べたところ、自社が持つポジションと資産のバランスが危うい状態にあり、会社がすぐにも倒産しかねないことを知る。深夜に上司が次々と社内に呼び込まれ、役員会が開かれ、幹部たちは想像を絶する決断を下す・・・。

マージン・コールとは、投資家が保有する売買ポジションに対して、相場が大きく変動して含み損が許容水準を超えてしまいそうな時に、追加金を上乗せしてポジションをそのまま保持するか、もしくは即刻解約するかを迫る投資業者から投資家への緊急連絡のこと。

作品では、マージン・コールの状態が生じた巨大投資銀行が、次々と大きな決断に迫られる24時間を描いている。観ている方は、胃が上に上がってくるようなイヤーな緊張感に襲われる。それでも面白さに惹き込まれて、途中で観るのを止めることができなかった・・・。

投資銀行の会長に、ハゲタカ風の冷酷な風貌のジェレミー・アイアイズ。切れ者の幹部役員にデミ・ムーア。マージン・コールに対応する総責任者にサイモン・ベイカー。他の作品では爽やかな好青年を演じること多いが、本作では血も涙もない肉食系の金融マンを演じている。そして、混乱の処理に翻弄される役員に、ケビン・スペイシー。人間的だが、どこか人として壊れている役を好演。

日本で劇場公開されなかったのがウソのような良作。何か金融界と利害関係があったのだろうか。正直言って、ウォール・ストリートよりも面白かった・・・。大物役者のガチンコ演技、人間同士の欲がぶつかり合う醜さと、ニューヨークの夜景の無機質な美しさのコントラストも、作品の奥行きを醸し出している。
 

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デンジャラス・ラン  Safe House

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<あらすじ>南アフリカ・ケープタウン。諜報活動の最前線から遠く離れたこの地で、CIAの新米職員マット・ウェストンは隠れ家の管理という閑職に辟易していた。ある日、大物犯罪者が護送されてきた。

その男の名はトビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)。元CIAの超エリート諜報員にして、今は国家機密を密売する危険人物として世界中から指名手配を受けていた。そんな時、隠れ家が武装した男たちに襲撃される。命からがらマットはフロストを連れ出すが…。(goo 映画より)

原題はSafe House、つまりCIAが外国で活動している際に、重要参考人などを一時的に秘密裏に拘束するために設けられた隠れ家、住居施設のこと。冒頭シーンは、このトビン・フロストをセーフハウスで尋問するシーンから始まるが、ストーリーの大半はフロストと、セーフハウス担当官の二人の逃避行が描かれているので、「デンジャラス・ラン」というのもうなずける。でも、Safe Houseという無機質な語感の原題の方が、本作の背筋が凍るようなサスペンスタッチを表していて、作品にフィットしている。

しかし、CIAというのは諜報機関のはずなのだけど、ここまで多くの映画に描かれるとは、さすがアメリカは民主主義の国と言わざるをえない。冒頭からリアルなウォーター・ボーディング(水責め)のシーンが出てくるなど、CIAはこんな感じでイラクでも活動していたのだなと、なんとも言えない感覚に襲われる。

伝説のエージェント、トビン・フロストを、新米のCIA職員が命からがら護送するのがストーリーの縦軸。一方で、CIAというのはスパイ機関だから、内と外に二重三重の騙し合いがあり、誰がまともで、誰が裏切り者なのかわからない心理戦が横軸になっている。この二つの伏線が微妙に絡み合いながらストーリーが進んでいく。

いろいろアクションシーンや、暴力シーン、心理戦などがたくさん出てくるのだけれど、一番怖いのはラストシーン。すごく微妙なので一回観ただけではよく分からないかもしれないが、よーく観るとマジで背筋が凍る。ある意味、どんでん返しでもある。人間不信にならないようにしたいものですw

マイ・ボディガード  Man on Fire

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<あらすじ>元CIAの特殊部隊員ジョン・クリーシー(デンゼル・ワシントン)。彼はこれまで、米軍の対テロ部隊に所属して16年に渡り暗殺の仕事を続けてきた。

そのためか心を閉ざし、生きる希望を見失っている。そんなクリーシーはある日、メキシコで護衛の仕事をしている部隊の先輩レイバーンから新しい仕事を請け負うことに。それは、誘拐事件が多発するメキシコ・シティに住む実業家の9歳になるいたいけな娘ピタ(ダコタ・ファニング)の“ボディガード”だった。さすがに始めはこの仕事に乗り気でなかったクリーシーも、ピタの無邪気な笑顔や素直なやさしさに触れるうちに心洗われていくのだが…。(allcinemaより)

なんとも言えない傑作。「なんとも言えない」と書いたのは、作品は最高に素晴らしいのだが、突っ込みどころが多すぎるから。

第一に、邦題、ダメすぎ。マイ・ボディガードとか、アホか。原題は、Man on Fire。炎の男とでも言うべきか。主役クリーシーを演じるデンゼル・ワシントンは、米特殊部隊上がりの中年男。いろんなトラウマに悩まされながら、黙々と任務をこなす。聖書を心の拠り所としながらも、心の重圧に苛まされ、ときには自殺を試みる。マイ・ボディガードといった軽い存在ではない。

第二に、準主役のダコタ・ファニング、可愛すぎ。本作を見ていると、本当に心が潰される瞬間が訪れる・・・。子役というのは、一般的に演技過剰なところがあり、それを承知でいろいろ賞賛されるが、ダコタ・ファニングは子役でありながら、演技の抑制が効いており、「アイ・アム・サム」とかでもそうだったが、見ていて掛け値なしで心を動かされる。子役というカテゴリーでくくれない本格派女優(もう18歳、まだまだ若いけど色香の漂う本当に立派な女優になった・・・、感慨・・・)。

第三は、監督のトニー・スコットが、もう二度と作品を作れないということ。心の中に鉛を流し込まれたような重圧感を感じる。本作では、かなり凝ったカメラワークが見れるが、それを批判する人もいる。しかし、これは監督の個性というものだろう。

主役クリーシーは、過去に苛まされながら、ジャック・ダニエルをあおり、ある晩、ピストルをこめかみに当てて、引き金を引く。しかし、なぜか銃弾は発射されなかった。彼は不発弾を、マッチの箱のなかにしまう。そして、新約聖書を改め読む。ラストシーンも、新約聖書をオマージュにしたものだ。さすが、デンゼル・ワシントンとトニー・スコットのタッグの作品に外れはない。