マネーボール  Moneyball

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<あらすじ>元プロ野球選手で短気な性格のビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、アスレチックスのゼネラルマネージャーに就任する。チームはワールド・チャンピオンになるには程遠い状態で、優秀な選手は雇えない貧乏球団だった。あるとき、ピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)というデータ分析にたけた人物との出会いをきっかけに、「マネーボール理論」を作り上げる。しかし、「マネーボール理論」に対し選手や監督からは反発を受けてしまい……。(「シネマトゥデイ」より)

どんな職場にも、根性や経験を重視する価値観と、データやロジックを重視する価値観の衝突というのはあるだろう。本作は、データとロジックを重視するビリー・ビーンが華々しい活躍をするサクセス・ストーリーを描いていて、とくに同じ価値観を持つ人々にとっては胸がすく思いがするだろう。

しかし、そんなビリー・ビーンも最近では苦労の連続であることが、ググるとよく分かる。今でもアスレチックスの現役GMだが、思うように行かないことが多いようだ。

それでも、だからと言って、ビリー・ビーンが作り上げたマネーボール理論(セイバーメトリクス)の価値が減じるわけではない。物事には、経験や勘のようなアートの世界と、データとロジックから成るサイエンスの世界の両面がある。前者だけに依存していた米野球界に、後者の要素を持ち込み、その妥当性を証明したビリー・ビーンの功績は大きい。映画は、彼の個人的な部分も丁寧に描いており、人間ドラマとしても見応えがある。

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トゥルー・グリット  True Grit

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<あらすじ>トム・チェイニーなる男に父を殺害された少女マティは、彼が逃亡した先住民居留地にひとり向かい、金品を売り払って悪名高い保安官・コグバーンに復讐の助力を依頼する。娘ひとりでの仇討ちなど夢物語、とマティの依頼を一笑に付したコグバーン。

しかし、チェイニーを生け捕ろうとするテキサス・レンジャーのラ・ビーフの協力を得て、ようやくコグバーンはチェイニー追跡に乗り出す。足手まといになるとの彼らの罵声を意に介さず、ただ一頭の愛馬とともに追ってきたマティを含めた三人組は先住民居留地に踏み入り、チェイニーがお尋ね者ラッキー・ネッド一味と合流していることを知って、彼らを待ち受ける。少女の復讐は果たして無事行なわれるのか。(Wikipediaより)

久しぶりにいい映画を見た。あらすじとしては上記のとおりだが、凄腕の保安官だがアル中のコグバーンを演じるジェフ・ブリッジズ、しっかり者の小娘マティを演じるヘイリー・スタインフェルド、エリートだが狡猾さの欠けたテキサス・レンジャー、ラ・ビーフを演じるマット・デイモンの3人の絡みが最高。

原作は1968年の小説で、出版直後にジョン・ウェイン主演で映画化もされている。実話をベースにした物語がとも思わさせるリアリティだが、そうでもないらしい。しかし、観た後の感覚が何とも心地よい。

人生の過酷さ、味わい深さ、そんなことを思わせる深い映画。コーエン兄弟の監督作品。相変わらず、人物描写が一歩抜けている。スピルバーグが製作総指揮に入っているのも、良い影響を与えたのかもしれない。

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英国王のスピーチ  The King’s Speech

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この映画が出るまで、おそらく多くの人は、この英国王の存在すら知らなかったのではないだろうか。主人公は、現在の英国王エリザベス2世のお父さん、ジョージ6世である。

もともと、このジョージ6世の父親、つまり現在のエリザベス女王から見てお爺さんに当たるジョージ5世には二人の息子がいて、長男が後のエドワード8世、次男が本作主人公のジョージ6世だった。お爺さんのジョージ5世が崩御した後、長男のエドワード8世が王位に就いたのだが、かねてより交際していた人妻シンプソン夫人との交際を断ちきれず、王位を放棄して、この恋人との結婚を優先したことで、王位が次男のジョージ6世に回ってくる。

ジョージ6世は、もともと体質も虚弱、性格も内向的で、生来ひどいドモリ(吃音)だったのだが、王位が回ってきたことで、人前で話をする機会が格段に増える。折からの第二次世界大戦の激化により、ドイツへの宣戦布告に際して、イギリス本土への攻撃激化に備えて国運を左右する決定的なスピーチをしなければならなくなり…。

ドモリの国王、ジョージ6世の演技(コリン・ファース)が素晴らしい。また彼を支える奥さん(のちのエリザベス皇太后、現女王の母親)のサポートも涙を誘う。吃音を治療する専門家のライオネル・ローグも、周囲から様々な誤解を受けつつも、国王を一人の人間として誠実に接する姿に心を打たれる。

ここ一番の重要なスピーチは、とにかく内容が素晴らしい。国王が、このスピーチに際して、どういう心の準備をしたのかということは、人が恐怖に打たれた時、どういう態度を取るべきかということの参考になるかもしれない。

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クロッシング  Brooklyn’s Finest

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「トレーニング・デイ」を作ったアントワン・フークアの監督作品。リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人が、ニューヨーク・ブルックリン地区の警官、刑事をそれぞれ好演。映画は、この3人の人間模様の交錯を描いている。

退職を間近に控えた現場の警官エディ(リチャード・ギア)は、私生活は破綻しつつも、とにかく無事に退職を迎えるため、できるだけ無難に公務をこなすことだけを考えて毎日を送っている。

家族思いの麻薬捜査官サル(イーサン・ホーク)は、病気の妻を抱えながら、経済的にも精神的にもギリギリの生活を強いられている。

地元のギャング組織に潜り込む潜入捜査官タンゴ(ドン・チードル)は、私生活の破綻と、警察上層部の潜入捜査に対する無理解に苦しみながら、これもまた限界の生活を送っている。こんな3人の運命が、ある事件をきっかけに互いに交錯し…。

アントワン・フークアは、人間の本質を描くのが上手い。誰もがオモテでは、まともな人間、真面目な人間を装って生きているが、裏では本当に惨めで、だらしなく、ときには邪悪な部分を垂れ流して生きている。本作は、そんな人間のダメな部分、恥ずかしい部分をストレートに描いている。

そういう意味で、本作は格好の良いポリス・アクション物ではなく、ヒューマン・ドラマの範疇に属する作品だろう。リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人も、それぞれに人間の弱さ、ダメさを無骨に演じている。

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ザ・タウン  The Town

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ボストンは、ハーバード大学をはじめとする学業の街というイメージがあるが、かつて「ディパーテッド」の舞台にもなったように、その近郊には犯罪率の高い街もあるようだ。本作の舞台となったThe Townと呼ばれるチャールズタウンも、そんな危険な街の一つ。

― かつてアイスホッケー選手として将来を嘱望されたダグ(ベン・アフレック)も、今では銀行強盗団を率い、その完璧な仕事ぶりで警察を翻弄していた。ところが、ある日の銀行襲撃で支店長のクレアを人質にとったことから、“タウン”の外で生きる人生を思い描くようになり、人生の歯車が想定外の方向へ動き始める…。

銀行強盗のシーンが凄い。コミカルなマスクをかぶって、銀行へ突入、抵抗する者は容赦なく殴り倒し、一気に金庫を開けさせる。仕事が終わったら、証拠を消すためにDNAを破壊する漂白剤を行内に撒き散らし、あっという間に逃走。何度も似た手口で犯行に及ぶのだが、手口があまりに鮮やかなので、警察も現場を取り押さえることができない。

チャールズタウンは、親から子へ銀行強盗が受け継がれるような札付きの犯罪都市のようだ。本作には、監督と主演を務めたベン・アフレックが、本物の元銀行強盗犯にアドバイザーや出演を依頼した。そんなわけで犯罪シーンには、これまでの犯罪ドラマには出てこないようなリアルなテクニックが出てきたりする。黒幕を演じる花屋の旦那、ピート・ポスルスウェイトにとっては、本作が遺作となった。

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