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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド  There Will Be Blood

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今から100年余り前の米国西部での石油採掘競争を舞台にした映画。古き良き素朴な時代を背景にしているが、全編にわたって不気味な雰囲気が漂っている。

最初、この不気味な雰囲気がどこから来るのか分からないが、観ていると徐々にそれが主人公ダニエルの心の中にある不安と恐怖心、そして利己的な強欲から漂ってくることが分かってくる。

本作の中で、ちょっと分かりにくいが、わりと重要な鍵を握っているのが、ダニエルが石油採掘の拠点として買収した土地に住むサンデー家の双子の息子、兄ポールと、弟イーライの存在だ。

ポールとイーライは、同じ役者が演じていることもあって外見は同じだし、物腰も柔らかくて良く似ているのだが、中身は真逆。兄ポールはわりと平凡な動機でダニエルに近づくのだが、弟イーライは、自分が主宰する異端教会のために、どこまでもダニエルを利用しようとする。

そういう意味で、ダニエルとイーライは、外見も生き方も全然違うが、本質的に利己的で、どこまでも強欲な点が、良く似ている。一方、ダニエルの息子HWは、親子だからダニエルと似ているはずなのだが、ダニエルと逆で、まっとうで健全な心を持っている。こうした登場人物の位置づけが興味深い。

本作は、たぶん聖書を知っているアメリカ人と、そうでない日本人の多くとでは、見方が変わってしまうかもしれないと感じた。とくに弟イーライが、神を信仰しているように装って、実は悪魔信仰の持ち主だということは、アメリカ人ならすぐに気づくが、日本人の多くがどの時点でそれに気づくか・・・。ほかにも、創世記を下敷きにしたポールとイーライの関係など・・・。その辺が、本作の見方にも少なからず影響する気がした。

本作のポイントを一言で言うと、それは強欲の怖さということだろう。人には誰しも弱点がある。ダニエルには、どうしても金銭欲に駆られる弱さがあった。本作では、ダニエルが徐々に金銭欲の虜になって狂気に駆られ、人格まで侵されていく様子が描かれている。人には誰も弱さがある。私はあまりカネに頓着しないが、他人事ではないと思った。

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ブライト・ライツ・ビッグ・シティ  BRIGHT LIGHTS BIG CITY

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かつて一生風靡した映画で、いまはDVDで入手不能な作品がいくつかある。これは、そんな作品の一つ。ジェイ・マキナニー原作のブライト・ライツ・ビッグシティ。

人生には、人目を引く魅力的なものがたくさんある。しかし、本当に大切なものは目に見えない。しかも、それは一つだけ。 ― きれいごとのように聞こえるかもしれないが、このことは散々遊びまくって、人生を棒に振りかけた人の方が気がつく真理かもしれない。

本作は、そういう深ーいところを、ニューヨーク在住の遊び人の視点から描いた秀作。こういう作品が、DVDで観れないのは信じられないが、一応YouTubeで全編見れてしまうのは、さらに信じられない・・・。

本作で、マイケル・J・フォックスが、将来の奥さんのトレイシー・ポランと出会ったのは有名な話。彼はその後、パーキンソン病にかかり、今も闘病中だが精力的に俳優活動をこなし、前向きに闘病体験を語っている。

今はケビン・クラインの奥さんで、二児の母ともなったフィビー・ケイツが美しい。24で活躍しながら、いまだヤンチャが収まらないキーファー・サザーランドも好演。YouTubeで観るのもいいけど、やはりDVDのきれいな映像で観たいものです。

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アビエイター  Aviator

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困った邦題だ。アビエイターではなくて、エビエイターである。アメリカ人の前で、アビエイター、と100回言っても100%通じない。また、この単語を習う中高生も、この単語を「エビエイター」と覚えるはずだ。

なんでこの問題にこだわるかというと、本作をレンタル屋や探したり、アマゾンで検索するとき、直感的に「エビエイター」で探しても、絶対に見つけられないからです。そういう意味で、この邦題は興行的に損なタイトルだ。ま、この問題はこのへんで。

さて本作は、世界最大級の億万長者にして航空王として名をとどろかせたハワード・ヒューズの半生を描いた作品。いつもどおり、ディカプリオの演技は素晴らしい。とくに本作では、ヒューズがだんだん精神を病んでいく様子を、鬼気迫る演技で演じている。

ケイト・ブランシェットもキャサリーン・ヘップバーンの役で出ており、こちらも良い。とくに、二人がヘップバーンの実家に行って家族全員でランチを食べているときに、会話が微妙に食い違い、場の雰囲気が徐々に壊れていく様子の演技は、出演者全員に二重丸という感じ。

本作で特に興味をそそられたのは、やはりヒューズの精神状態というか、心の病の問題。なぜ彼が心を病んだのかは、あまりよく知らない。でも、映画を観る限り、彼が莫大な遺産を相続し、なんの苦労もせずに大金を手にしてしまったことで、人とうまくやっていくための社会性を身に付ける機会を失ってしまったことが、心を病んだ原因の一つではないかという印象をうける。

事業の才覚や飛行機設計の才能は、人並み外れたものがあったようだ。そして資金もあったから、そういう意味では大成功した。しかし映画でも描かれている通り、晩年は大変不幸だったようだ。一人の人間の人格の深みを描いているという点で、本作を大変興味深く観ました。

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大統領の陰謀   All the President’s Men

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ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件(1972年)が主題。実際にこの政治スキャンダルを暴いたワシントン・ポスト紙の二人の記者を主人公に据えて、事件の発端から結末に至るまでを史実に忠実に描いている。

本作の優れた点は、あえて善玉、悪玉を色分けせず、文字通り史実に忠実に、事件のあらましを冷静に描いているところ。大物から小物に至るまで、事件関係者が本名のままで登場しているところもリアリティを増し加えている。

このように、リアリティを追求した作りになっている一方で、映画として実に見応えのある味わい深い作品に仕上がっている。それは、ひとえに監督、脚本、キャスト(R.レッドフォード、D.ホフマンほか)の力量なのかもしれない。

ウォーターゲート事件について知ると、他の政治スキャンダルが色あせて見える。それほど大変な事件でした。

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