イラク」タグアーカイブ

グリーン・ゾーン  Green Zone

グリーン・ゾーン [DVD]
グリーン・ゾーン [DVD]

posted with amazlet at 13.11.03
ジェネオン・ユニバーサル (2012-04-13)
売り上げランキング: 28,473


「グリーン・ゾーン」とは、イラクの首都バグダッド中心部にある米軍本部とイラク政府の中枢が集まる安全地帯のこと。本作は、グリーンゾーンの中で渦巻く政治と、最前線で大量破壊兵器の捜索に当たる米軍将校(マット・デイモン)の対決を描くポリティカル・サスペンス。

イラク戦争の大義は、フセイン政権による大量破壊兵器(実質的に核兵器)の開発を止めさせるという点にあった。しかし、探せど探せど、そんな形跡は見当たらない。今でこそ、ブッシュ政権は、目障りなフセイン政権を除去する目的で、大量破壊兵器という介入の言い訳を、半ばでっちあげて開戦に踏み切ったことは周知の事実だが、誰も当時はそんなことは知らなかった。

本作では、通常の軍の指揮系統の中に、CIAや国防総省の幹部が良くも悪くも深く介入してきて、戦争政策を様々に軌道修正、もしくはねじ曲げていく様子が描かれている。そんな様子は、報道で漏れ伝わってくるイラク戦争の実態と妙に一致していてリアリティを感じさせる。

本作は、銃をドンパチ撃ち合うアクションというよりも、戦争の方針を巡り、激しい綱引きを繰り広げる軍やCIA、国防省幹部の心理戦を描くサスペンス。だからこそ、見ごたえのある作品に仕上がっている。

ハート・ロッカー  HURT LOCKER

ハート・ロッカー (期間限定価格版) [DVD]
ポニーキャニオン (2013-02-02)
売り上げランキング: 30,888


最近、イラク戦争やアフガン戦争を描いた作品が続々と出てきている。これまで戦争映画というと、第二次世界大戦、ベトナム戦争を描いたものが圧倒的に多く、戦争と言えば、大規模な陸海戦、ジメジメしたジャングルの戦いというイメージが強かった。

しかし、こういう最近の戦争を描いた作品を見ると、現代の戦争は基本的に市街戦で、ハンビーのような装甲車で、路地の中を走り回って戦うものだということがよくわかる。そういう意味で、こういう映画を観ると戦争のイメージが変わる。

本作は、イラクで活動する爆弾処理班の活動を描いた作品。イラクやアフガニスタンでは、銃撃戦などよりも、遠隔操作による路肩爆弾(IED)による死傷者が圧倒的に多いという。そういう意味でも、この作品を見ると、現在進行中の戦争がどういうものかよく分かる。

監督は、本作でアカデミー賞をとったキャサリン・ビグロー。女性が監督したという女性特有の視線は感じられない。むしろ、一つの戦争映画として、ドライで硬質な感性を感じさせる秀作となった。

ブッシュ  W.

ブッシュ [DVD]
ブッシュ [DVD]

posted with amazlet at 10.12.12
角川エンタテインメント (2009-09-11)
売り上げランキング: 42902


オリバー・ストーン監督のブッシュ前大統領の伝記映画。原題「W.」は、ブッシュ氏のミドルネーム、「ウォーカー(Walker)」のイニシャル。たぶん、アメリカ人の多くは、この一文字で誰を指しているか分かるから、こういうタイトルになったのだろう。

オバマ大統領の強烈なカリスマ性と人気に、今やブッシュ氏の存在は完全にかすんでしまった観がある。しかし、人気は時とともに移り変わる。オバマ氏のこれまでの最高の支持率は就任直後の68%だったが、ブッシュ氏は同時多発テロ直後に90%という驚異的な支持率を叩き出した。当時のブッシュ人気は、今のオバマ人気と比較にならないものだった。

本作は、ブッシュ氏の同時多発テロ直後からイラク介入に至るまでの様子を、青年時代の破天荒でヘタレの生き様もところどころ交えながら、心理描写も巧みに描いている。よく知られていることではあるが、ブッシュ氏は、もともと名門に生まれた「ぼんぼん」であり、勉強も仕事もあまりできない、性格的にも欠点の多い人である。しかし、この人には、どこか人を惹き付けてやまない人間的な魅力がある。本作は、そんな等身大のブッシュ氏を、風刺と愛情をもって描いている。

個人的に一番印象に残ったシーンは、酒浸りの生活を送っていたときに、神様に出会って回心する場面。信仰はブッシュ氏の人格の中核を成しているだけに、しっかり描かれている。ブッシュ氏の信仰は、本作ではやや風刺的なコメディ・タッチで描かれているが、それは彼のイラク政策が失敗に終わったからで、結果論だろう。実際には、ブッシュ氏はもっと真剣な態度で祈り、かつ真剣な態度で政策決定に臨んでいたのではないかと思う。

ブッシュ氏を演じたジョシュ・ブローリンの演技が凄い。もともと顔はあまり似ていると思えないが、喋り方や挙動、ちょっとした仕草が、笑えるほどそっくり。これは役者魂と努力の賜物なのだろう。繰り返してしまうが、勉強も仕事もできず、欠点も多いブッシュ氏を、これでもかとばかりリアルに演じている。食事中に口に物が入ったまま、要領の得ない発言を一所懸命繰り返す様などは、まさにブッシュ氏が目の前にいる感じ。こういう飾らない天然さに、人は惹き付けられるのかもしれない。

人気ブログランキングへ

グアンタナモ、僕たちが見た真実  The Road to Guantánamo

グアンタナモ、僕達が見た真実 [DVD]
東北新社 (2007-06-22)
売り上げランキング: 40036


2001年の同時多発テロの直後、パキスタン系英国人の若者数名が、結婚を決めるという超個人的な理由で、たまたまかつての母国に渡った。現地でちょっとした冒険心がもたげ、彼らは陸路でアフガニスタンに入り、国際紛争の最先端を自分の目で見ようとする。

しかし、運悪く戦闘の只中に突っ込んでしまい、多国籍軍からタリバンと間違えられて身柄を拘束されてしまう。挙句の果てには、他の容疑者とともにキューバのグアンタナモ米軍基地へ強制送致され、散々な目に遭う。本作は、そんな実話をベースにした英国映画だ。

米軍や情報機関のエリートたちは、髭を生やした浅黒い顔をした男たちを片っ端から捕まえては、一人ひとり「お前はオサマ・ビンラディンの知り合いだろう」、「居場所を吐け」と恫喝する。それも行き当たりばったりというより、自分たちなりに考えて「本気」で尋問するのである。

そんなに簡単にビンラディンの「知り合い」が見つかるわけがない、まず組織の背景を徹底的に調べよう、といった深謀熟慮のカケラもない単純さ。しかし、この荒唐無稽とも言える単純さが、いかにもアメリカ人的であり、それなりのリアリティを感じさせる。

アメリカは、たかだか建国200年あまりのポッと出の若い国だ。それだけに、アメリカ人というのは総じて、長い複雑な歴史を持つ他国の本質を理解することが苦手だ。自分を見る単純なレンズでしか、他者を見れない弱点がある。

たとえば、かつてベトナム戦争でも、北ベトナム指導部は当時の冷戦構造に乗じて、ソ連や中国を利用することによって、民族独立という本来の目的を達成したわけだが、アメリカはベトナムがソ連や中国の駒として利用されていると、複雑な現実を単純な冷戦の代理戦争の枠組みだけで捉えてしまい、見事に負けてしまった。

しかし、このアホみたいな単純さは、同時にアメリカの強みでもあるように思う。複雑な現実を徹底的に単純化、記号化し、あらゆる雑念を排除して、最小の資源から最大の利益を導き出すことにかけては、天才的な才能を持っている。建国200年余りで、一種の未開地を世界最大・最強の覇権国に変えてしまったのは、そんなアメリカの特殊な才能によるところが大きいだろう。

話がやや脱線したが、今後の対テロ戦争の帰趨は、この単純さが凶と出るか、吉と出るかによるのではないか、なんてことをこの映画を観て感じました。しかし、米軍の扱いも相当ひどいが、あのパキスタンの若者たちも相当の若気の至りだ。生きて帰ってこれたのは、奇跡としか言いようがない・・・。

人気ブログランキングへ

ジャーヘッド   Jarhead

ジャーヘッド [DVD]
ジャーヘッド [DVD]

posted with amazlet at 13.11.04
ジェネオン・ユニバーサル (2012-04-13)
売り上げランキング: 37,419


戦争映画というより、戦争に一兵士として参加したアメリカ人青年の個人体験記という風合い。

主人公が経験した戦争は湾岸戦争。湾岸戦争というと、ついこの間の戦争のような気がするが、もう18年前になる。つまり、いま高校を出て就職したり、大学に入っている子(?)たちが生まれた年の戦争である。もうかなり昔の話である。

さて本作であるが、主人公の個人的物語だけあって、派手な戦闘シーンはあまりない。しかし、これが戦争の現実というものなのだろう。冒頭の訓練の様子も、フルメタルジャケットのようなハチャメチャ振りはない。たぶん、実際もこんな感じなのであろう。派手さはないが、その分、兵士たちの心理描写、背景説明などに気を遣っている。

ジャーヘッドとは、アメリカ海兵隊の俗称。アメリカの海兵隊は、世界のどこかで戦争が起きれば真っ先に投入される陸海両用の「殴りこみ部隊」として名高い。そういう意味で、海兵隊はアメリカ社会では独特の尊敬の対象でもある。そんな背景も合わせて本作を見ると、また違った見方もできるかも知れない。

人気ブログランキングへ